清水 節

清水 節

略歴: 映画評論家/クリエイティブディレクター●ニッポン放送「八木亜希子LOVE&MELODY」出演●映画.com、シネマトゥデイ、FLIX●「PREMIERE」「STARLOG」等で執筆・執筆、「Dramatic!」編集長、海外TVシリーズ「GALACTICA/ギャラクティカ」DVD企画制作●著書: 「いつかギラギラする日 角川春樹の映画革命」「新潮新書 スター・ウォーズ学」●映像制作: WOWOW「ノンフィクションW 撮影監督ハリー三村のヒロシマ」企画・構成・取材で国際エミー賞(芸術番組部門)、ギャラクシー賞(奨励賞)、民放連最優秀賞(テレビ教養番組部門)受賞

近況: ●「シン・ウルトラマン」劇場パンフ執筆●ほぼ日の學校「ほぼ初めての人のためのウルトラマン学」講師●「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」劇場パンフ取材執筆●特別版プログラム「るろうに剣心 X EDITION」取材執筆●「ULTRAMAN ARCHIVES」クリエイティブディレクター●「TSUBURAYA IMAGINATION」編集執筆

清水 節 さんの映画短評

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  • ブラック・スキャンダル
    極悪非道なジョニデの実存が全てを支える、後悔のギャング映画
    ★★★★

     70年代なら埋もれたかもしれないが、ライトな涙と感動が増殖してシネコンの「闇」が薄まる今、こうした極悪非道な裏社会の現実を描く映画は貴重になってきた。実録と叙事の中庸をいく演出は劇的高揚に欠け、実在のギャングに似せた悪党面メイクに頼りすぎたきらいはあるが、変貌著しいジョニー・デップの実存が全てを支えている。同じボストンの幼馴染をめぐる『ミスティック・リバー』が贖罪のドラマならば、本作は、権力を得るために利用した地縁血縁にからめとられ、軌道修正がきかなくなった男たちの後悔のドラマだ。居場所を求め一歩間違えれば人は誰でも道を踏み外してしまうことを、決して憧れを抱かせない醜いデップの風貌が物語る。

  • ザ・ウォーク
    失われつつある狂気へのリスペクトと失われた夢へのレクイエム
    ★★★★

     もちろん大道芸人プティが、NYワールドトレードセンターのツインタワー間を“歩いた”、めまいを起こさせる3D映像が見せ場だ。違法行為への彼の破滅的な挑戦は、ユーチューバー的な刹那のパフォーマンスとは異なり、アートにも等しい。
     ワイヤーを張るための周到な計画の過程で、われわれは高所に魅せられたプティの共犯者になっていく。ツインタワーとは、経済大国アメリカの栄華の象徴だった。その頂上の綱渡りは、危うい「世界制覇」ともいえる。天空を密かに、しかし公然と渡る夢。
     この映画体験の真の醍醐味は、直接目に映る映像以上に、失われつつある「狂気」へのリスペクトと、崩落し失われた「夢」へのレクイエムである。

  • 白鯨との闘い
    海難事故の凄惨なサバイバルが、名著『白鯨』へと昇華された真相
    ★★★★

     巨大クジラとの勇猛果敢なバトルも、漂流の果ての凄絶なサバイバル劇も描かれてはいる。しかし、名著『白鯨』はいかにして誕生したのかを伝えることが真の命題。取材者メルビル(ベン・ウィショー)が、遙か昔の海難事故を生き延びた生存者ニカーソン(ブレンダン・グリーソン)に真実を尋ねにいく物語の幹に魅せられる。当時最年少だったニカーソンが自然と人間の本性を知り、過去を引きずりながら生きてきた苦悩こそが重要。あの『白鯨』で片足をクジラに奪われた復讐に燃えるエイハブ船長に込められた、当事者たちの情念に心動かされる。事実をそのまま描かず、叙事的英雄譚へと昇華させるに至った、取材者と生存者との関係性に打たれた。

  • パディントン
    ベン・ウィショーの吹替えによって、淋しげなクマは生命感を得た
    ★★★★

     野性的だけど紳士的なクマ。出自や命名・服装の秘密が分かるだけじゃない。孤独と不安に苛まれながらも人のぬくもりを信じ、山奥からロンドンにやってきた“よそ者”パディントンが、障壁を乗り越え家族に溶け込む物語だ。ロンドンの色彩設計が素晴らしい。謎の悪女ニコール・キッドマンのトム・クルーズ パロディが可笑しい。そして当初起用していたコリン・ファースの声では違うと感じ、途中降板させてまで、英国男子ベン・ウィショーの声に懸けた監督の判断は正解だ。古い蓄音機で英語を勉強したパディントンの古風な発音を絶妙に表現するウィショーによって、礼儀正しくチャーミングで淋しげなクマは、ぬいぐるみを超える生命感を得た。

  • ブリッジ・オブ・スパイ
    緊迫感漲るタッチでヒューマニティを謳うスピルバーグの到達点
    ★★★★★

     米ソ冷戦時代の空気を丹念に再現しているが、今現在の映し鏡でもある。疑心暗鬼で人権意識を顧みない風潮は、何ら変わっていない。名もなき一介の弁護士が、両国で捕らえられたスパイの交換に身を投じる。いわば、身体を張って引き裂かれた世界を修復しようとする“架け橋”だ。コーエン兄弟の脚本により際立つ悲喜劇を基に、スピルバーグ演出は緊迫感漲るタッチで悠然と人間讃歌へ導く。『シンドラーのリスト』『アミスタッド』『リンカーン』で人種を超えた命の等しさを説き、『プライベート・ライアン』では恐怖の道行きを経て見知らぬ者を救った、スピルバーグ。その精神は研ぎ澄まされ、ある頂点に達した感がある。

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