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ブラック・スキャンダル (2015):映画短評

ブラック・スキャンダル (2015)

2016年1月30日公開 123分

ブラック・スキャンダル
(C) 2015 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., CCP BLACK MASS FILM HOLDINGS, LLC, RATPAC ENTERTAINMENT, LLC AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

ライター8人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3.4

くれい響

改めて、スコセッシのスゴさを痛感

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

衝撃の実話が題材なので、演出次第では、いくらでも面白くなりそうなのだが、そこはブレないスコット・クーパー監督作。『クレイジー・ハート』『ファーナス/訣別の朝』同様、今回もなんとか役者の力に引っ張られている感が強い。この設定ながら、主人公たちの少年時代を突っ込まないなど、まるでドラマやキャラを描くことを放棄しているようで、ひたすらエピソードで綴るだけ。そのため緊迫感もなければ、カタルシスもなく、感情移入もできず、改めてマーティン・スコセッシのスゴさを痛感する一本に。ただ、『ウォーリアー』の兄貴とは思えないジョエル・エドガートンをはじめ、イイ顔した役者の見本市状態になっているので、★おまけ。

この短評にはネタバレを含んでいます
中山 治美

想定内のジョニデ

中山 治美 評価: ★★★★★ ★★★★★

『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズ
などジョニデが才能を持て余している状態が続いている。本作で久々本領発揮か⁉︎と期待したが、ジョニデ演じるギャングの非道ぶりだけが際立つ、独り舞台で終わってしまった。
極悪人の人間性を理解するのは難儀だが、それでも彼にどうしようもなく惹かれてしまうカリスマ性を魅せるのは周囲のキャラクターのあってこそ。だがFBI捜査官コノリーも、そんな兄を持ってしまった弟の政治家も人物像が単調で、彼らこそ何を考えているのか分からず。もう少し葛藤や苦悩があって然るべきだが。
スター俳優に引っ張られてしまった弊害か。
しかし、それをコントロールするのが監督の腕の見せ所である。

この短評にはネタバレを含んでいます
清水 節

極悪非道なジョニデの実存が全てを支える、後悔のギャング映画

清水 節 評価: ★★★★★ ★★★★★

 70年代なら埋もれたかもしれないが、ライトな涙と感動が増殖してシネコンの「闇」が薄まる今、こうした極悪非道な裏社会の現実を描く映画は貴重になってきた。実録と叙事の中庸をいく演出は劇的高揚に欠け、実在のギャングに似せた悪党面メイクに頼りすぎたきらいはあるが、変貌著しいジョニー・デップの実存が全てを支えている。同じボストンの幼馴染をめぐる『ミスティック・リバー』が贖罪のドラマならば、本作は、権力を得るために利用した地縁血縁にからめとられ、軌道修正がきかなくなった男たちの後悔のドラマだ。居場所を求め一歩間違えれば人は誰でも道を踏み外してしまうことを、決して憧れを抱かせない醜いデップの風貌が物語る。

この短評にはネタバレを含んでいます
ミルクマン斉藤

こんなとんでもない話がありました、だけではねえ。

ミルクマン斉藤 評価: ★★★★★ ★★★★★

薄い頭髪を後ろに撫でつけ狂気を発散させるJ.デップには凍りつく。しかし話は面白いものの異常な事実のみが語られるに過ぎず、その社会的背景や人物の心理に全く踏みこもうとしないのがつまらない。例えば最初のほうで、凶悪なチンピラに過ぎない時代のデップに親しく接するお婆さんがアイルランド系コミュニティの事情を推し量る尺度のように出てくるが、それっきり。デップが闇社会でのし上がるにつれ彼女を含む周囲の心象がどう変化したのか描かれることはない。彼にずっと付き従った暗殺者や下っ端の心変わりの理由も然りで、とにかく薄っぺらいのだ。兄がギャング、弟が上院議員なんて事態を許した情勢にこそ興味津々なのだが。

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山縣みどり

ジョニー・デップをオスカー候補にしなかった意味がわからない

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

ハゲ散らかした上に青い瞳のジョニー・デップの外見に違和感を持たず、尋常じゃない役作りを堪能すべし。穏やかに見えて冷酷なまなざしや邪悪さをにじませる言動、異様な支配欲や殺人衝動と家族愛が同居するサイコな男の荒ぶる生き様をジョニーがリアルに体現している。『ディパーテッド』のJ・ニコルソンがモデルにした犯罪者の実話だが、ジョニーが全然上! 彼をオスカー候補にしなかった時点でアカデミー協会の存在意義を問いたいよ。彼を取り巻くJ・エドガートンやB・カンバーバッチら役者陣の好演や複雑な人間関係をわかりやすくまとめたスコット・クーパーの切れ味鋭い演出と相まって、最後まで前のめりで見てしまった。

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相馬 学

極悪顔の吸引力に唸る実録犯罪ドラマ

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 ジェシー・プレモンスの悪党顔がアップになる冒頭で引き込まれ、同時にこの映画が何を描こうとしているか見当がつく。言うまでもなくそれは、抜け目なく立ち回る男たちの犯罪の世界だ。

 『クレイジー・ハート』のスコット・クーパー監督による演出は実話を“記録する”ことを徹底。これに応えて、ジョニー・デップを筆頭とする俳優陣は極悪人相をつくりつつ、ストイックなワルになりきる。

 カンバーバッチふんする政治家のクリーンな性格は少々鼻につくが、観客が気持ちを置けるキャラであると思えば、これはこれでアリだろう。いずれにしても、21世紀に甦った実録犯罪映画として見応えがある。

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森 直人

「ど真中」をのし歩くスコット・クーパー!

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

米映画の王道モデルを「役者の映画」としてフレッシュに蘇生させること。それが俳優出身の若手監督スコット・クーパーが抱える表現的な主題だろう。いつも名優が揃う彼の映画だが、ジョニデの怪演というキャッチーな突出点を得た今回の第三作は熱量の過去最高値を示す。エドガートンもカンバーバッチも当然完璧だ。

クーパーの描く物語は目新しくない。70年代~80年代のアイルランド系移民の裏社会物なんて定番の域だ。だが彼の映画はそれでいい。『クレイジー・ハート』にしろ『ファーナス/訣別の朝』にしろ、何度も語られている物語を繰り返すことで、こうした男たちがアメリカのどこかで今も生きているのだと想像させてくれる。

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平沢 薫

ジョニー・デップVS演技派男優集団

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 とにかくジョニー・デップの周囲を固める演技派俳優たちの顔ぶれがすごい。「エクソダス:神と王」のジョエル・エドガートン、「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」のベネディクト・カンバーバッチ、「ミスティック・リバー」のケヴィン・ベーコン、「ブルージャスミン」のピーター・サースガード、「フライト・ゲーム」のコリー・ストールと、映画賞でおなじみの面々がズラリ。その中で、ジョニー・デップがいつもの役とはまったく異なる、冷酷非情な犯罪者をシリアスに演じて、他の共演者たちに負けない存在感を示す。そういう1本。「ブレイキング・バッド」で注目のジェシー・プレモンスも健闘している。

この短評にはネタバレを含んでいます
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