山縣みどり

山縣みどり

略歴: 雑誌編集者からフリーに転身。インタビューや映画評を中心にファッション&ゴシップまで幅広く執筆。

近況: 最近、役者名を誤表記する失敗が続き、猛省しています。配給会社様や読者様からの指摘を受けるまで気づかない不始末ぶりで、本当に申し訳ありません。

山縣みどり さんの映画短評

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  • 約束の宇宙(そら)
    宇宙に飛び出す女性が向き合うのは?
    ★★★★★

    社会進出が当然の現代の女性が抱えるジレンマをリアルに描いていて、これぞまさにマミー・ギルト(母親の罪悪感)と膝を打つ。夢に向かって努力してきた主人公サラがキャリアも家庭も完璧にこなそうとする気持ちは側から見ていると痛々しいのだが、同性として納得。母親の事情をわかりつつも寂しさを抑えきれない娘ステラの気持ちもわかるので、母娘の行き違いに胸が痛くなる。ステラと同世代の娘を持つA・ウィンクール監督の細やかな演出が効果を発する。実際に欧州宇宙機構で撮影が行われ、ミッション前のハードな訓練やストイックな生活様式の描写も新鮮だ。最後の最後まで目が離せない仕掛けも用意されていて、感動増し増し。

  • AVA/エヴァ
    ジョン・ウィックになれなかった女殺し屋
    ★★★★★

    謎の組織に属する女殺し屋の戦いというわけで『ジョン・ウィック』的な作品と思いきや、家族ドラマが盛り込まれていたのでイマイチ乗れず。主人公エヴァを演技派女優J・チャステインが演じる以上、単なるドンパチ映画にしたくなかった監督の意地? 美貌を生かしたハニートラップもやれば、ガンフーもどきの格闘にも挑戦したジェシカはかなり頑張っているが、アクションよりも会話劇でキャラクターの感情を表現する方がやはりお得意。この手の映画にウェットな人間ドラマは不要としか思えず。エヴァの母親をG・デイヴィスが演じていたので「もしや?」と思ったが、映画ファン向けのひねりもなくて残念。

  • アンモナイトの目覚め
    演技派女優が競演した情熱的で繊細な恋愛ドラマ
    ★★★★★

    封建的なイギリスを舞台にした女性同士の恋愛ドラマで、K・ウィンスレットとS・ローナンが情熱的だが繊細な演技を披露する。ウィンスレットが演じる古生物学者メアリーが陰としたら、ローナン演じる地質学者の妻シャーロットは陽。真逆にも思える二人が徐々に気持ちを通い合わせ、やがて恋の炎を燃え上がらせていくさまは演技派女優が演じたからこその説得力が漂う。特に上手いのがウィンスレットで、他人に易々とは心を開かない頑なさとを感じさせつつも過去の失恋と孤独に苦悩する表情の切ないこと。先輩の熱演に大いに刺激されたローナンも大胆なセックスシーンに挑んでいて、これぞまさに演技合戦の妙味であろう。

  • パーム・スプリングス
    ミレニアム版『恋はデジャ・ブ』!
    ★★★★★

    同じ日を生き続ける青年ナイルズがうっかり二人の人間をループに巻き込んだことで、“生きる意味”と向き合っていく。陽気なA・サムバーグが繰り返しに疲れ果てたナイルズの陰の部分を巧みに演じ、忘れたい日に閉じ込められた女性タラとの関係によって変化する心境を見事に表現する。タラ役のC・ミリオティは彼との相性抜群で、SNLメンバーじゃないのが不思議。ナイルズを憎悪する男を演じるJ・K・シモンズは相変わらず達者で、コメディに深みを与えている。未来への希望も夢も閉ざされ、仮に死んだとしても痛みを感じては蘇る。まさに地獄絵のような状況をどう打破するか? SFっぽさも加わったミレニアム版『恋はデジャ・ブ』だ。

  • 21ブリッジ
    チャドのカリスマ性が生きるクライムアクション
    ★★★★★

    B級の香りもするが、満足度の高い犯罪ドラマ。主人公デイヴィスが悲劇的な過去ゆえに正義のためなら犯人射殺も厭わず、権力とも無縁な刑事という設定がいい。私立探偵シャフトや刑事ルーサーを彷彿させるキャラで、C・ボーズマンのカリスマ性が生きる。しかし犯人側にも同情の余地がある上、演じるのが主演級スターなので、単なる勧善懲悪で終わらない気配が濃厚。さらにNYPDとFBIの縄張り争いなども絡み、事態は二転三転。TV界のベテランであるB・カーク監督は、観客の心を掴む演出が上手い。冒頭の強盗シーンから「何かおかしい」と思わせるし、デイヴィスの頭に浮かび始める疑念を見る側が同時に感じる仕掛けとなっている。

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