山縣みどり

山縣みどり

略歴: 雑誌編集者からフリーに転身。インタビューや映画評を中心にファッション&ゴシップまで幅広く執筆。

近況: 最近、役者名を誤表記する失敗が続き、猛省しています。配給会社様や読者様からの指摘を受けるまで気づかない不始末ぶりで、本当に申し訳ありません。

山縣みどり さんの映画短評

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  • 花椒の味
    辛いけれど旨味たっぷりな火鍋は、人生の縮図
    ★★★★★

    父の死後に初めて顔を合わせた三姉妹が互いを新たな家族として受け入れながら、それぞれの人生と新たに向き合っていく。関係性としては憎しみや敵意を持ち込みやすいのに、すぐに“姉妹の絆”を培い、支え合う存在となるのが新鮮。3人ともが自身の道を探している途中であり、結婚して母になることが幸せという旧弊な価値観への抵抗を思わせる共通点も感じられ、H・マック監督のフェミニスト的視線を感じる。父の麻辣スープを再現しようと頑張る姉妹が個性的で、サミー・チェンら女優陣の好演がキャラクターに深みを与えている。そして、サミーとの相性抜群だったアンディ・ラウやリッチー・レンが脇を固めていて、思わずニヤリ。

  • アンテベラム
    南北戦争前に戻りそうな気配が漂うアメリカの闇!
    ★★★★★

    トランプ政権下、公然と集会を開く白人至上主義者を大統領が“いい人”扱い!? 自らを「支配層」と信じる人間が差別意識を剥き出す異常さが恐ろしいし、連邦議会議事堂襲撃に至っては南北戦争前に戻ってもおかしくない気配を感じる。そんなアメリカが直面するレイシズムに焦点を当てた、ひねりの効いたスリラーだ。BLMの原点となった警官の過剰暴力を思い起こさせる冒頭のシーンから、非常にタイムリー。J・ヒューストンら個性派が出演しているが、物語を一人で引っ張るのはJ・モネイだ。南部のプランテーションで奴隷として扱われることになり、困惑しながらも自由を求めるリベラル派作家ヴェロニカを体当たりで熱演している。

  • 劇場版 きのう何食べた?
    あの空気感に再び浸れるだけで幸せ!
    ★★★★

    ゲイ・カップルの日常を軸に同性愛者のリアルや彼らに対する無理解をわかりやすい形で伝える漫画の素晴らしい精神を反映させた作品。配役も脚本も演出も見事だったドラマの映画版と聞いて浮かれた心が軽やかに踊り続ける2時間なり! 映画だからと特別な事件を盛り込まないのがいい。空気感もお手軽レシピの扱いもそのままなのがいい。史朗&賢二それぞれの家族の同性愛観の差や信頼し合ったパートナー間で浮かぶ疑念、さらには毛髪の悩みといったエピソードに「わかる~」と納得。で大満足。相性抜群の内野聖陽&西島秀俊は相変わらずキャラになりきっているし、佳代子さんやスーパー店員といったレギュラー陣にも見せ場があって、大満足。

  • MONOS 猿と呼ばれし者たち
    人類の本質は民主主義に向いているのか疑問も!?
    ★★★★★

    暴力的な大人によって戦闘に駆り出される少年兵は哀れだし、本作で猿と呼ばれる若者にも同情の余地あり。呼び方からして失礼だし! 厳しい訓練に明け暮れ、無線で繋がった組織に従うだけの若者がある事件をきっかけに自我に目覚め、集団が徐々に崩壊。各人の善悪基準で突き進みながら、凶暴性を発揮したり、家族愛に目覚めたり、優しさを失ったり。極限下にある人間の選択にそれぞれの人間性がのぞく。文明の代弁者と思われる人質の決断も然り。「蝿の王」を思わせる寓話的な物語で、暴力的な本質を持つ人類に民主主義が本当に最適なのか疑問も湧く。アメリカを筆頭に揺らぎ始めている民主主義に未来はあるの?

  • モーリタニアン 黒塗りの記録
    国家による超法規的措置はありなの?
    ★★★★★

    世界同時多発テロ後にグアンタナモ収容所で拘束・拷問をされたモハメドゥの体験に恐怖を覚える。収容所で行われる拷問や検閲はグロテスクの一言。正気を保てたモハメドゥの強い精神力に驚くが、相当なトラウマを抱えているはず。K・マクドナルド監督は彼の解放までを本人&人権弁護士と軍検察官側から見つめ、アメリカ国家による超法規的措置の闇を暴いていく。人権問題が絡む実話だけに脚色は最小限と思われ、淡々と物語が進む。ハリウッド的な痛快逆転劇を期待している人には不向きだろうが、現在進行形の問題を知る上では重要な作品。エピローグで明かされる、今なお司法手続きなしで拘束されているプリズナーXの運命が気になる。

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