花椒の味 (2019):映画短評
花椒の味 (2019)ライター2人の平均評価: 3.5
辛いけれど旨味たっぷりな火鍋は、人生の縮図
父の死後に初めて顔を合わせた三姉妹が互いを新たな家族として受け入れながら、それぞれの人生と新たに向き合っていく。関係性としては憎しみや敵意を持ち込みやすいのに、すぐに“姉妹の絆”を培い、支え合う存在となるのが新鮮。3人ともが自身の道を探している途中であり、結婚して母になることが幸せという旧弊な価値観への抵抗を思わせる共通点も感じられ、H・マック監督のフェミニスト的視線を感じる。父の麻辣スープを再現しようと頑張る姉妹が個性的で、サミー・チェンら女優陣の好演がキャラクターに深みを与えている。そして、サミーとの相性抜群だったアンディ・ラウやリッチー・レンが脇を固めていて、思わずニヤリ。
三姉妹のピリッと苦みある人情劇
まるで火鍋の具材のように、香港・台湾・中国大陸の女優たちを巧く使い分けた見事な構成に、タイトル通りピリッと苦みのある展開がスパイスと化す人情劇。かなりゲスいのに愛嬌を感じさせるケニー・ビーに加え、サミー・チェンにアンディ・ラウ&リッチー・レンを絡ませてゴールデンコンビ復活の、ぐうの音も出ないキャスティング効果も大きいだろう。葬儀の宗派を間違えてしまうなど、泣かせとユーモアのバランスの良さや、堅実で丁寧な演出もあって、日本初お目見えとなるヘイワード・マック監督作としても、ベストな仕上がり。同タイプの三姉妹モノ『弱くて強い女たち』と比べても、こちらの方がしっかり面白い。