中山 治美

中山 治美

略歴: 茨城県出身。スポーツ紙記者を経てフリーの映画ジャーナリストに。全国商工新聞、月刊スカパー!(ぴあ)、時事通信などに執筆中。

近況: 映画祭で国内外を飛び回っているうちに”乗り鉄”であることに気づき、全国商工新聞で「乗りテツおはるの全国漫遊記」を連載。旅ブログ(ちょこっと映画)もぼちぼち書いてます。

サイト: https://tabisutekaisyu.amebaownd.com

中山 治美 さんの映画短評

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  • チャンシルさんには福が多いね
    好調な韓国映画界の片隅で
    ★★★★★

    アラフォーの自分探し物語としてはもちろん、業界裏話としても秀逸。主人公が元プロデューサーなら、家政婦として厄介になるのは自分磨きに必死な新進女優。その彼女の仏語教師の本業は映画監督だ。好調な韓国映画界の実態を映し出す。とりわけ主人公が映画会社社長から「監督あってのあなた」と蔑まれるシーンはリアル。本作の監督はホン・サンス監督の元P。間違いなく実体験を投影したのだろう。だが本作を見れば一目瞭然。とぼけた笑いもウイットに富んだセリフもホン作品を彷彿とさせ、彼女の存在が大きかったことを証明する。何より半径2mの世界をエンタメに仕上げた手腕は見事。自分を過小評価した人たちへの一矢を報いた痛快作である。

  • 陶王子 2万年の旅
    改めて見つめたい器の歴史と人類の知恵
    ★★★★★

    陶芸に詳しい人なら既知の事柄かもしれない。それでも器の精霊”陶王子”による巧みな導きと美しい映像に魅せられ、引き込まれずにはいられない陶磁器の歴史。それは自然から日用品を生み出した先人の知恵を受け継ぎながら、ファイン・セラミックまで誕生させてしまった人類の足跡でもある。そこでふと考える。食べ物を盛る用途だけなら葉でも手だっていいはず。なぜ器に実用性だけでなく芸術性も求めてきたのかと。そこには先人たちが営みの中で食に重きを置き、地球の恵みを頂戴する行為への感謝が託されていたはず。図らずにもコロナ禍で食とじっくり向き合う機会を得た今だからこそ本作で綴られる物語の数々が胸に響くはずだ。

  • ニューヨーク 親切なロシア料理店
    N.Y.に思いを馳せながら……
    ★★★★★

    N.Y.を舞台にデンマークのシェルフィグ監督が仏のタハール・ラヒム、英国のビル・ナイら多国籍キャストで撮った合作映画。それだけでN.Y.らしさを表しており、しかもタハールもビルも老舗のロシア料理店スタッフというのが洒落が効いていて笑っちゃう。そんな異国での苦悩を知る人たちが、DV夫から逃れてきた母子たちに手を差し伸べる。19年製作だが、今まさにN.Y. の片隅で同様の事が行われているのではないか?いや、行われていて欲しいと願わずにはいられない。そして『幸せになるためのイタリア語講座』『人生はシネマティック!』の監督の、その時代を懸命に生きる女性たちに向けられる視線は変わらず優しい。

  • レディ・トゥ・レディ
    『Shall we ダンス?』のその先へ
    ★★★★

    日本映画では珍しく時代を先取りしてる。冴えない人生を送っている主人公が競技ダンスに挑んで前向きになるという展開は『Shall we ダンス?』と同じ。さらに本作は男女の賞を撤廃することを決めた映画祭や、履歴書からも性別欄が無くなるという性に対する固定観念が大きく変化している今、その問題に切り込む。しかも”紳士淑女のコロシアム”という本のタイトルにもなっている競技ダンスで問うとは大胆な。伝統か?変化か?悩ましきテーマだが、大塚千弘&内田慈のダンスが美しく、これも有り!と観客を納得させてしまうに違いない。明言多き脚本が良い。熟年世代には「人生で残った式って、葬式ぐらいでしょ」が胸に刺さった。

  • 脳天パラダイス
    忖度なしの清々しさ
    ★★★★★

    ”泣ける”とか”感動した”が良い映画の基準と見なされる中、観客に忖度なしの、山本政志監督らしい破天荒ムービー。どこに連れて行かれるのか全く先の読めない展開と、コンプライアンスもお構いなしのやりたい放題の世界に身を委ねて鑑賞すると、「こんなふざけた映画を作っても生きていけるんだな」とベテラン監督の逞しさに不思議と生きる力が湧いてくるに違いない。とはいえ、舞台となる大邸宅を発見した制作陣の手腕、何気に本格的なミュージカルシーン、さらに80年代から多様な人々をキャスティングし、大手の作品にはない独自の視点で日本社会を切り取ってきた山本監督の妙味が随所に光るのだ。

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