オー・ブラザー! (2000):映画短評
オー・ブラザー! (2000)すべてが歌い続けるコーエン兄弟流の音楽映画
すべてが歌い続ける、まさに音楽映画。鉄道工事をする囚人たちが歌い、洗礼を受ける信者たちが歌い、川で洗濯する女たちが歌うだけでなく、手動トロッコが歌い、列車が歌い、マシンガンが歌う。そうでない時には、ジョージ・クルーに扮する主人公が歌うように抑揚をつけながら喋り続ける。これらの歌の原点は、土から生じて歌われてきた米南部の土着古謡。冒頭にホメロスの古代叙事詩オデッセイの「ミューズよ、私を通して歌い、語りたまえ」を掲げ、それを実践したのがこの映画なのだ。しかも画角はシネマスコープ、撮影は名匠ロジャー・ディーキンス、映像が気持ちよくないわけがない。目と耳を委ねているだけで至福の時間が味わえる。
この短評にはネタバレを含んでいます