ベルヴィル・ランデブー (2002):映画短評
ベルヴィル・ランデブー (2002)ライター2人の平均評価: 5
ざわめきが愛おしさに変わる、アニメーションの喜びを最高値で
カリカチュアされたデザインのキャラが、かわいく、愛しく見えてくる。ほぼセリフなく無表情なのに、秘めた感情がその向こう側から伝わってくる。実写では不可能なアニメーションの奇跡を最高レベルで達成した一作。
物語自体、誘拐劇の闇に突き進むが、小道具や音楽の効果、シーンのあまりに美しい切り替えで、止まらず読み進めてしまう絵本の感覚。そこに主人公ばあちゃんがヒーローと化す快感が重なり、サスペンスと痛快アクション、一気のカタルシス、さらに切ない余韻の流れは「映画」として完璧。
ツール・ド・フランスを描きつつ、時を超えて2021年東京五輪と世論がシンクロする瞬間もあり、これも映画のミラクルか。★5でも不足。
次々と予想を裏切る“ババア版『96時間』”
心優しいおばあちゃんと寂しげな孫の心温まる話かと思いきや、ツール・ド・フランスに懸けるスポ根モノへ。だが、主人公がレース中に誘拐され、まさかの“ババア版『96時間』”に突入! 秘密クラブへのアジト潜入から、手榴弾やバズーカ砲が飛び交うカーチェイスと、次々と予想を裏切る展開に驚愕。カエルが主食のジャック・タチ好きかしまし娘に、ガチで黒ずくめの男など、グロ寸前なデフォルメ感溢れるキャラ描写に唖然。そして、基本セリフなく、画の動きと音楽というアニメ本来の魅力のみで突っ走るトリップ感。創造性と狂気が紙一重であることを実証したシルヴァン・ショメ監督のジブリも認めた才能に酔え!