ベティ・ブルー/愛と激情の日々 (1986):映画短評
ベティ・ブルー/愛と激情の日々 (1986)この愛の深さは映画だからか。いや、違う。
あまりに誰かを好きになってしまい、その他のことがまったく見えなくなる。愛の深みにハマる人間の本能は多くの映画のテーマになってきたが、これほどまでに激しく鮮烈で、ある意味で地獄を見るような恐ろしさまでたたえた作品は稀有だろう。
ベアトリス・ダルのベティ役に取り憑かれたような一体感もあって、女性側の愛情が過剰で一人よがりに見えるが、男性側の視点になれば、受け身の蟻地獄にハマっていく喜びに静かに震える。
ブルーとイエローが際立つ幻想的な映像美、どこかメランコリックな音楽が、壮絶なまでの運命に優しき共感を宿すことに成功。一生に一度くらいは、こんな愛を経験してみたいと錯覚させる魔法が、今作にはある。
この短評にはネタバレを含んでいます