ディア・ハンター:映画短評
ディア・ハンター戦争の傷跡と大いなる後悔を追体験させる4Kリマスターの威力
あのロシアン・ルーレットが4Kリマスターで甦った。情感あふれる寒々しい光景の中、撮影監督ヴィルモス・ジグモンドによる、出征までの青春のシークエンスが煌めいている。デ・ニーロもウォーケンもメリル・ストリープも、ただただ初々しい。ギター曲「カヴァティーナ」の旋律が映像を切なく包む。そして地獄の戦場は、より生々しくなった。長い長い旅路の末に訪れる、仲間達が口ずさむ「ゴッド・ブレス・アメリカ」。神よアメリカを守りたまえ…と祈るように静かに合唱するその姿を、今も反米的だと解釈する者はいるのだろうか。不寛容でキナ臭い時代、ヴェトナム戦争の深い傷跡と大いなる後悔に満ちた本作が訴えかけるものは計り知れない。
この短評にはネタバレを含んでいます