ブラックバード 家族が家族であるうちに (2019):映画短評
ブラックバード 家族が家族であるうちに (2019)ライター2人の平均評価: 4
後悔のない人生の終え方
日本では映画祭上映のみで終わったデンマーク映画(ビレ・アウグスト監督)のアメリカ版リメイク。末期がんで余命幾ばくもない女性が尊厳死を決意。人生最後の週末を共に過ごすため、娘たちやそのパートナー、孫、親友などが自宅に集まるものの、やがて傍目からは完璧に見える理想的な家族の不協和音が徐々に露呈し、みんなが納得したはずの決断に迷いが生じていく。尊厳死というメインテーマ以外にも、恐らく賛否両論が分かれるだろう要素の多い作品だが、たとえ世間一般のルールや常識から逸脱したとしても、母親として妻として女性として、最後まで後悔のない人生を送りたいというヒロインの選択のひとつひとつに納得ができる。
安楽死というディープなネタが軸だが、共感するのは家族の確執
死を覚悟し、その瞬間を自分で決め、最後に愛する人たちを自宅に呼ぶ基本設定はシビアそのもの。しかし当事者のリリーに切羽詰まったムードはない。家族や友人に普段の自分を見せるべく、リリー役S・サランドンも、あえて熱演を回避している印象。
むしろ痛烈なのは、炸裂する長女と次女の言い合い。立場や考え方の違いも絡み、「兄弟姉妹あるある」的に感情移入する人が多いのでは? この種の確執劇ではK・ウィンスレットの独壇場になると改めて尊敬。
大切な人の死をどう受け入れるのか。そもそも死とは、哀しむべきものか。作品全体の心地よい語り口と、観終わった瞬間の予想外に穏やかな後味で、作り手は人間の「真理」を伝えたのかも。