星の旅人たち (2010):映画短評
星の旅人たち (2010)なぜ人は旅に出るのか
原題は道を意味する「The Way」。本作ではサンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼者の路を指すと同時に、「道は自分探しの旅」だという。『百万円と苦虫女』の鈴子は「探さなくたって、イヤでもここにいますから」と安易な自分探し旅を否定するが、とはいえ人間は過酷な状況に追い込まれないと心と向き合わないもの。本作では道中死亡した息子の意志と遺灰を抱えて、父親が旅に出る。かと言って分かりやすい感動はない。だが自然に身を投じ旅仲間と交流を重ねるうちに、生き抜くためにつけていた鎧や傲慢さが少しずつ剥ぎ取られ自分の弱さや過ちが見えてくる。これぞ旅の醍醐味。何よりスペインの風景が、旅情に浸らせてくれるのだ。
この短評にはネタバレを含んでいます