NO (2012):映画短評
NO (2012)ライター2人の平均評価: 4.5
けっこう辛辣なモノの見方がいい。
一介の新進CMマンが独裁政権を倒す…そんなライトな政治寓話かと思えばいささか感触が違う。「新自由主義」と当時も揶揄され、CMもソ連のプロパガンダみたいなのしか作れぬピノチェト派。片や弾圧15年の労苦は判るが、どストレートなアプローチしか能のないリベラル派。両者どっちもどっちな中、思いっきり英米の影響を浴びてリベラル派に参入するG.G.ベルナルはといえば、現代的な感覚はあるから慣れない国民には大受けすれどもしょせん資本主義国CMのコピーのコピー、独創的な表現を同僚が試みたって「暗い」の一言で片づけてしまうような、“見た目”だけの中身のなさ。政権倒しても本質は変わらず、だからラストもかなり苦い。
政治は誰のためにあるのか肝に銘じましょう
独裁政権下のチリで行われた’88年の国民信任投票。最初から賛成多数が当たり前の出来レースだったはずが、まさかの反対過半数で政権が転覆してしまったという実話に基づく作品。
反対派陣営のテレビCM制作を任された広告マンが主人公だ。そもそも投票自体が政権の正当性をアピールするための茶番。様々な脅迫や妨害工作をくぐり抜けながらCMの放送に漕ぎつけるサスペンスが見所となるが、それ以上に興味深いのは主人公と両陣営の視点の違いだ。
政権側は権力の維持しか眼中になく、反対側も独裁者憎しばかりが先走る。ノンポリな主人公だけが国民目線に立っているのがなんとも皮肉。日本の政治家先生方も他人事じゃないよ。