キック・アス/ジャスティス・フォーエバー (2013):映画短評
キック・アス/ジャスティス・フォーエバー (2013)ライター3人の平均評価: 4
前作からさらに一歩踏み込んだヒーローについてのヒーロー映画
平凡で地味な高校生が勝手にヒーローを名乗ることで、そのヒーローという存在自体の本質や背負うものに斬り込んでみせた1作目。
あれから3年余を経た本作では、武器を手に悪人と死闘を演じるだけがヒーローなのか、そもそもマスクを被らねばヒーローにはなれないのか、などの素朴な疑問を通じて、正義とは一体なんぞや?という核心へと踏み込む。
ヒットガールの高校生活など青春ドラマ的な要素を膨らませつつ、今回も放送禁止用語と過激なバイオレンスが満載。倍返しならぬゲロ&ウ〇コ返しは賛否両論(?)必至だが、ヒーローについてのヒーロー映画というブレない軸は期待通りだ。ただし、ジム・キャリーの出番は意外とアッサリ。
容赦なきエログロナンセンスの嵐
前作よりトロマ臭が強い『スーパー!』を溺愛した者にとって、今回のエログロナンセンス爆発の展開は喜ばしい。つまり、前作のキャッチーさに惹かれた人ほど、女子とヤリまくるキック・アスの姿や、上下の穴から汚物が噴き出る光景にドン引きするので要注意。
格闘技高校生を描いた『ネバー・バックダウン』の監督が自ら売り込んだ脚本だけに、クライマックスも『クローズZERO』ばりに泥臭い乱闘で心地よい。ちなみに、無理してセレブ女子になろうとするヒット・ガール(クロエ)の姿は劣化というより、『アダムス・ファミリー2』でのゴスっ娘、ウェンズデー(クリスティーナ・リッチ)の姿が重なって笑いを誘う。
王道のアメコミ映画へ出世!?
前作の熱烈なファンのウケは本国ではイマイチだったようだが、これはこれで悪くない。屈折感が薄れた分、エンタメ作品としての純度が高まった感さえある。
前作ではヘタレだった主人公キック・アスも2作目ともなるとヘタレではいられない。ヒット・ガールの成長も必須。ドラマの肝はサム・ライミ版『スパイダーマン』シリーズにも似た成長劇。そういう意味では王道のアメコミ映画に近づいたと言えよう。
一方ではディテールの意外性が嬉しい。女性の悪キャラ、マザー・ロシアのとてつもない怪力ぶりや、消化器官に異常をもたらすガジェットはインパクトが強すぎて、忘れられそうにない。