ニンフォマニアック Vol.1 (2013):映画短評
ニンフォマニアック Vol.1 (2013)ライター2人の平均評価: 5
山崎ナオコーラさんには悪いが、人のセックスは笑えるよ。
嗜虐的作品を作るラースの新作は、デカメロン風な笑劇。ヒロイン、ジョーが性への目覚めに始まる性遍歴を語り下ろすのだが、ネット文化が発達した今やショッキングでも何でもない。ニンフォマニアックを自認する彼女を媒体に監督は性を追求したかったのかもしれないが、「道」ともいえる真剣さでセックスに向き合う姿は滑稽。山崎ナオコーラさんには悪いが、人のセックスは笑えると自戒まじりに失笑した。さらに愉快なのが彼女の話を聞く老紳士で、彼の天然すぎるツッコミはラストへの布石。そして哲学的に聞こえても実は空虚という皮肉さ。演じるステラン・スカルスガルドの期待通りの変態ぶりはVol.2で発揮されるので、お見逃しなく!
色情狂のセックスはポリフォニーである!
色情狂ジョー(C.ゲンスブール)と童貞書痴 (S・スカルスガルト)が交わす、極めて具体的な性的告白と百科全書的分析によって描かれる冒険物語はマルキ・ド・サドのスタイルを想起させ知的で痴的。ことにVol.1はジョーの若き日を演じるS.マーティンの“カラダを張った”というに収まらない魅力が爆発、人生の哀歓を体現する父親役C.スレイターに感嘆し、乱入寝盗られ妻U.サーマンに爆笑。デス・メタルとフランクが同列に並ぶ選曲も鮮烈だが、後半メインとなるのはバッハ、それも『惑星ソラリス』で使われたコラールで、壁にはA.ルブリョフ風のイコンまで。謎のタルコフスキー引用のワケはVol.2で明らかになるか?