もうひとりの息子 (2012):映画短評
もうひとりの息子 (2012)テーマだけじゃない!『そして父になる』と同じ共通点が…
『そして父になる』と同じ子供取替え事件がテーマだが、本作は宗教と政治が絡むだけにさらに複雑だ。いまだ争いが耐えないイスラエルVS.パレスチナ。本作の場合は、フランス系イスラエル人なので仏語を話し、かつユダヤ教徒。方やアラビア語でイスラム教徒という家族だ。つまり、息子じゃないと現実を突きつけられた18歳の少年たちは、いきなり家族の中で自分一人が敵となり、神など幼少から信じていたモノすべてがガラガラと崩れることになる。さらに肉親じゃないと分かった瞬間、父や兄たちは余所余所しくなり、憎悪さえぶつけてくるのだ。この状況、自分なら耐えられないだろう。
だが本作は一方で、両者は間違いに気付かなかったほど人種に違いはなく、レッテルに左右されやすいという皮肉も描いてる。あわよくば、国際社会を敵に回しかねない挑戦的な内容に、作り手たちの覚悟を感じる。
それにしても『そして父になる』もそうだが、血にこだわるのは父親の方というのが興味深い。母親と違って腹を痛めたという実感がない分、子供との絆を信じられる確かなもの欲しいのだろうか?