舞妓はレディ (2014):映画短評
舞妓はレディ (2014)ライター4人の平均評価: 2.8
やっぱり「アナ雪」って凄かったよね!
『マイ・フェア・レディ』を下敷きにし、花街の世界だけでなく、日本ならではの方言の魅力にも迫る。普通の人が見過ごしがちな日常を細かく突いていく周防正行監督ならではの視点で成立された、゛らしさ゛全開の周防印的娯楽作。最近、社会派に傾倒していただけに昔に戻ったのは嬉しくもあるが、『狸御殿』シリーズを彷彿とさせる和製ミュージカル仕立てといい時代錯誤を感じる。エンディングで上白石萌音がキレッキレのダンスを披露しているだけに、あれを生かせなかったのは勿体ない。
それ以前に、印象に残るミュージカルシーンがないのは致命的。園子温監督『TOKYO TRIBE』しかり日本映画界の弱点が露呈されてしまった。
主題歌はクセになります
一途なだけが取り柄の田舎娘・春子を演じる上白石萌音のピュアなドン臭さは大きな魅力だし、あえてセットや書割を多用した昭和の大衆娯楽映画的なカラフルさもノスタルジーを掻き立てて良い塩梅。お茶屋遊びの世界を、その華やかさも厳しさも、そして結局はただの水商売では?という素朴な疑問を含めて人情味たっぷりに描いた物語も悪くない。
しかし、問題はミュージカル仕立ての演出だ。最初から本格的なミュージカルを目指すつもりはなかったとのことだが、しかしそれにしても歌と踊りを“見せる”に必要な最低限のセンスが欠如しているため、見ていて恥ずかしいやらいたたまれないやら…。タイトルを含めたダジャレのセンスも微妙。
歌でイントネーションの違いを表現するくらいじゃないとね。
周防正行久々の『ファンシイダンス』系“業界体験”映画 (伊丹十三譲りのハウトゥ映画という意味では社会派ものも同様だが)。上白石萌音の頑張りと舞妓化粧の似合いっぷりはなかなか微笑ましい。でも問題は何故“ミュージカル”という形を採ったかだ。駄洒落のネタが『マイ・フェア・レディ』だから、というだけなのか? ちゃんとした構成と展開を持った楽曲は二曲ほど(ま、タイトル曲のコーラスは耳残りするが)、その他多くの楽曲はしごく短いもので、好例としてはあの『鴛鴦歌合戦』的な趣向だが、オペレッタ的軽快さからもかなり遠く、歌が物語のテンポを寸断する役割しかもたらさない。音楽的感性の不足を感じるばかりなのが残念。
速くなく、遅くなく、ちょうどいい感じがツボ!
「マイ・フェア・レディ」ならぬ「舞妓はレディ」、というオヤジギャグなタイトルが、実はちゃんとこの映画のどこか懐かしいなごみ系の魅力を表している。
時代は特定されていないが、音楽も物語も、昭和歌謡ロマン。昭和歌謡がそうであったように、ヨーロッパ風ありアメリカ風あり。幻想シーンの背景も、あえてCGではなく、書き割りの室内セット。歌は「世界中がアイ・ラブ・ユー」方式で、上手でも下手でも俳優自身が歌う。あくまでもゆるく、味は薄味で、主人公の恋も"淡い想い"レベル。速くなく、遅くなく、ちょうどいい感じで、日本人のDNAに刷り込まれた伝統的な快感のツボを刺激してくれる。