MONSTERZ モンスターズ:映画短評
MONSTERZ モンスターズライター4人の平均評価: 2
なぜ彼らは戦い、なぜ無実の人が死なねばならないのか?
人間を操れる男VS.唯一、操れない男。だが、操れない男は己の能力に気づいていない。ならば放っておけばいいのだ。実害がないのだから。でも、操れる男は執拗に追い回す。自分の体力を消耗させながら。なぜだ!?
それを解明するのは「文化人類学と遺伝子工学に精通している」という特別捜査官(藤井美菜)だったのだろうが、彼女のキャラクターが機能していないため観客は置いてけぼりをくらうだろう。
最近は米映画のヒーローものですら闘う意味を自問するが、本作は時代に逆行しているかのようだ。さらに娯楽映画とはいえ、罪のない人の死亡率が高い。その辺りの作り手の無自覚さを遺憾に思う。
雑なところまでオリジナル真似なくてもよかろうに。
藤原竜也に姿を見られたものは意思を操られる、それが判っているのに何故警察は見られないように拿捕しようとしないのか、あまりに学習しなさすぎないか。何故山田孝之は、自分を幾度も殺そうとしただけでなく無意味に他人の命を奪う藤原に共感を抱くのか。同じモンスター/アウトサイダーだから、という理由で片づけるつもりだろうか。その山田も逃走中なのに(それ以前に何故彼が指名手配されなきゃならないのか)何故友人とスーパー銭湯で会うのか、そもそも何故男たちはやたら裸になりたがるのか。木村多江はいったい何がしたかったのか。謎を挙げればキリがないがひょっとして中田秀夫はゾンビっぽいモブシーンがやりたかっただけ?
藤原VS山田を盛り上げる緩急ある演出
明らかに『デスノート』から影響を受けたオリジナルを、『デスノ』のプロデューサーが藤原竜也主演でリメイクという大胆な企画である。硬派な作りと思いきや、オリジナル同様、ツッコミどころ満載のコミカル描写があり、最初は戸惑うかもしれない。だが、それが突如訪れるシリアスな展開との対比となっており、そんな緩急の差がいい結果を生んでいる。
あえてアナログ感にこだわったことで、妙にZ(ゾンビ)感が出た中田監督ならではホラー演出や下村勇二演出によるモブ・アクションもいいが、なんといっても藤原VS山田孝之による“過剰なまでの”男対決。特にビーチボールを笑顔で打ち返す山田の胸毛には、展開とともに哀愁を感じるほど。
本当の怪物は心の中に潜んでいる
オリジナル韓国版は未見。周囲の人間を自在に操ることができる男と、その超能力が全く通用しない唯一の男の死闘が描かれる。
その“操れない男”もまた、実は不死身の肉体を持つ超能力者。両者とも特異体質に起因する悲惨な過去を背負い、世間から目立たないよう生きてきたが、人格的には対照的だ。前者は怪物であるがゆえに屈折し、後者は怪物であるがゆえに慈しみ深い。この2人の対決を通じ、物語は人間の心の中に潜む怪物の正体へと迫る。
ただ、全編で低予算が理由と思しき不自然な描写が散見され、2人を取り巻く人間模様も紋切り型の域を出ていない。そのため、肝心の憎しみや葛藤のドラマが消化不良に陥った感は否めないだろう。