アイム・ソー・エキサイテッド! (2013):映画短評
アイム・ソー・エキサイテッド! (2013)ライター2人の平均評価: 3.5
原点回帰!?ポップな“ゲス”が映えるアルモドバル最新作
ベルイマン風のシリアスな女性ドラマと、変態チックなサスペンス、弾けたコメディの3点のトライアングルの中でアルモドバルは映画 を撮っている感がある。その位置でいうと本作は、もっともコメディの点に近い。
ショーパブ的なパフォーマンスは『バチ当たり修道院の最期』、異性愛も同性愛も入り乱れるかしましさは『神経衰弱ぎりぎりの女たち』を連想させる。性欲が先走るキャラクターの、ラテンの明るいノリも楽しげで、初期アルモドバル作品を思い出しながら楽しんだ。
エキセントリックな展開さえも、ポップな映像の中ではずいぶんと中和される。毒は控えめなのでアルモドバル初心者にもオススメしたい。
口当たりの良いアルモドバルに感じる一抹の寂しさ
着陸不能な旅客機の中で繰り広げられるハチャメチャな人間模様を描いた、いわばアルモドバル版「エアポート」シリーズ。彼にとっては「キカ」以来、実に20年ぶりとなるコメディだ。
しかしながら、本作のギャグにも風刺にも往年の毒々しさやアナーキズムが希薄。下ネタは単なる下ネタに過ぎず、オネエ客室乗務員たちもステレオタイプの陽気なオカマちゃんの域を出ず。ポップな映像とお下劣なユーモアの向こう側に人間の凄まじい情念や業を映し出した、かつての鬼才アルモドバルの姿は微塵も感じられない。
やはり、彼もまた初老にさしかかり人間的に丸くなってしまったのか。長年のファンとしては一抹の寂しさを禁じえないところだ。