真夜中の五分前 (2014):映画短評
真夜中の五分前 (2014)中盤からのミステリ的展開は、じりじりと昂奮!
なんとも美しくミステリアスな空気をまとった傑作だ。互いに取り換え可能なのではないかという存在の疑念を運命的に持つ、遺伝子レベルまで相似形の双子姉妹。淡々と反復されるミニマルな日々を異国で生きる青年。この両者が出会い喚起されるアイデンティティの物語はあの『めまい』を想わせるが、愛の対象を喪失した男性にこだわる、いかにも行定勲的なドラマともいえる。特に素晴らしいのが、夢幻的な照明と撮る者の視線を感じさせつつ移動するキャメラ。上海が舞台なせいか李屏賓が撮った『春の惑い』のそれを感じさせるが、その原典版『小城之春』をも含む文革で潰える前の上海電影の引用もあり、そう的外れではないだろう。
この短評にはネタバレを含んでいます