美しい絵の崩壊 (2013):映画短評
美しい絵の崩壊 (2013)ライター3人の平均評価: 3.3
N・ワッツとR・ライトの起用で別の意味が…
ママ友が、互いの息子と恋に堕ちる。法律上はノープロブレムだ。だが、N・ワッツとR・ライトという同系統の風貌を持つ2人を起用したことで妄想が膨らみ、官能さが増している。そう、連想するのは近親相姦…。゛男性は母親に似た女性に恋をする゛とか゛男は永遠なるマザコン゛という恋の格言を具現化したかのようだ。抱くのは嫌悪感か?羨望か? 個々人の道徳観を試されているかのようだ。
一歩違えばアダルトビデオの世界だが、豪州の美しい風景に、人形のような美男美女の起用でお上品で高尚な雰囲気に仕上がっている。これだから、映像表現って面白い。
これは「崩壊」じゃなく「美しい絵の完成」だ。
これはある種の「性的ユートピア」、それぞれの性的欲望に忠実な人々が幸福な時間を過ごすお話である。いっけん淫靡な設定ではあるから、あっけらかんと浮世離れしたオーストラリアの海と空の色が不釣り合いにも見えるが、基本的に常識外な関係性にこれほど相応しいロケーションはない。それはどこか日本の太陽族映画…とりわけ中平康『狂った果実』を想起させるもの。ま、4人の親密すぎる関係に巻き込まれた女性たちの怒りは判らぬでもないが、驚くほど“それはそれ”として描かれるのに監督の真意を感じる。そもそも疑似どころか真正レズと思われるR.ライトとN.ワッツがある時点で寝ていれば生まれなかったかも知れない物語だけどね。
永遠に欲望の対象でありたい女の業は深い!
小じわも美しい演技派女優2人を主役に据えたことで物語に相当の説得力が加わったファンタジックな女性ドラマだ。息子たちも親友という幼馴染みの美女2人とそれぞれの息子との関係が描かれるが、根底に流れるのは「アラフォーになっても若い男の欲望を刺激する女でありたい」という女の業だろう。遺伝子的なつながりがないのでセックスしても問題はないが、精神的には近親相姦に近い。美男美女が演じているし、女優たちが身につける素敵ファッションやおしゃれなインテリア、オーストラリアの美しい自然のせいでさらりと見てしまうが、母子依存とかエディプスコンプレックスにまで考えが及ぶと心の奥にドロリとした澱が残る。