新宿スワン (2015):映画短評
新宿スワン (2015)ライター3人の平均評価: 3.7
おそらく今年No.1の男優祭り!
今年4連発が控える園子温、まずは快走スタート。『地獄でなぜ悪い』で示した深作愛が、仁義なきスカウトバトルで職人的に活用された。その高性能な演出力に加え、監督独特の泥臭さが水商売の色気に接続!
結果、『アウトレイジ』ばりに男優の「ワルイイ顔」が立ち並ぶ事に。綾野剛、山田孝之、伊勢谷友介を始め全員最高。『龍三』『ビリギャル』など「悪役」でフル稼働の安田顕も特筆すべき。
歌舞伎町も風営法強化以前のパワーが漲る「成り上がり空間」として描出されており、ヤンキー的純情も効いているので原作ファンの満足度も高いのでは。アゲハ(沢尻エリカ)のパートは原作よりスウィートで、『愛のむきだし』を連想したりも。
スカウトマンをヒーローとして描くことには抵抗アリ
歌舞伎町を舞台にした2大スカウト勢力の抗争劇を軸にしつつ、どん底から這い上がる熱血新米スカウトマンが、様々な事情を抱えて水商売に身を投じる若い女性たちを幸せにすべく奔走する。
歓楽街の表通りから裏路地までカメラが駆け回る映像にはリアルなストリート感が漲り、金と欲望と暴力の渦巻く群像劇にもシャープな緊張感が漂う。アウトロー系バイオレンスとしての面白さは十分だ。
ただ、若い女性をキャバクラやソープなどに紹介して手数料を取るスカウトは、所詮は女衒やポン引きの類であることに変わりない。そうしたダークサイドも盛り込んではいるものの、それでも主人公をある種のヒーローとして描くことには抵抗を感じる。
限りなく“スカウト版『クローズZERO』”
139分の長尺ながら、恐ろしいほど安心して観られるのは、限りなく“スカウト版『クローズZERO』”なキャスティングと展開によるところが大きい。さらに、カメラが山本英夫ということで(亡き「新宿ミラノ座」の屋上や外階段の景色は壮観!)、監督のクレジットは園子温なのに、三池崇史監督作を観ているような感覚に陥る。また、劇中ヘルスが出てこようが、エロさを感じさせないのは女性客に向けての配慮にも思えるが、『闇金ウシジマくん』のような怖さに欠けるのは、若干モノ足りない。とはいえ、俳優・綾野剛の勢いを感じさせる一本であることは間違いなく、同じマタ山本作品としても『ルパン』より続編が観たいと思わせてくれる。