マルティニークからの祈り (2013):映画短評
マルティニークからの祈り (2013)ライター2人の平均評価: 3
家族愛の物語、でもエリート批判も忘れないよ!
だまされて麻薬の運び屋にさせられた主婦のサバイバルを獄中の本人と、彼女を連れ戻そうと苦労する夫側から描き、圧倒的なリアリティと緊迫感に打ちのめされる。言葉が通じない上、強面の女囚や看守から身を守らなくてはならない主人公の孤独と恐怖感たるや。チョン・ドヨン演じる主婦が実に弱々しく、とても芯が強そうに見えないのが素晴らしい。魂が引き裂かれそうな絶望の表情を見ているだけで心が痛む。家族愛で困難を乗り切る物語だが、「おおっ」と思わせたのが駐仏韓国大使館員の描き方。エリート意識むき出しで、自国民救出よりも上司の顔色うかがいが優先な小物っぷり。誇張はあるだろうが、偉そうなエリートって本当に嫌だわ。
ま、自業自得ですね。
モデルとなった家族には申し訳ないが、不注意すぎるだろとツッコミたくなるありがちな話。そしてありがちな社会派映画的アプローチだ。ことに古めかしいのが韓国駐仏大使館員の描写。その怠慢・無能ぶり(でもレジャー目的でマルティニーク島には二度も行く)は、ま、事実そうだったのかも知れないがいささか戯画化されすぎていて陳腐。島の刑務官がサディスティックなレズ(『ママはレスリング・クイーン』の肉屋おばさんが最高だったC.マシエロ!)だなんて、これも事実そうだったのかも知れないが女囚モノのクリシェじゃないか。救いは主人公を演じるチョン・ドヨン。当然リアリティ溢れる演技だが、彼女にとっちゃこんなの朝飯前だろう。