シークレット・ミッション (2013):映画短評
シークレット・ミッション (2013)ライター2人の平均評価: 4
「愛の不時着」でのサプライズ演出で再注目!
ときに「変態仮面」にもなる、「稲中」な緑ジャージのアホキャラな主人公・ドング。ギターが弾けないロッカーと品行方正な高校生に化け、南に潜入した同志と彼の掛け合いは、完全に青春コメディだ。党でなくK-POPのファンクラブ“幹部”に選ばれる先輩スパイや貧民街の人々との人情喜劇も微笑ましいが、そこはキム・ギドク組出身のチャン・チョルス監督作。次第に不穏な空気が包み込み、コミック原作ならではの強引さも相まって、一気に壮絶すぎるラストまで突き落とす。アクションシーンも抜かりなしだが、通帳のエピソードなどを踏まえると、話題の韓流ドラマ「愛の不時着」でのドングのサプライズ登場は泣けて当然!
ただのアイドル映画と侮るなかれ
韓国に潜入した北朝鮮のイケメンスパイたちを描いたアクションだが、ただのアイドル映画に終始しないところが韓国映画の底力と言うべきだろう。
超エリート工作員のリュファンが“貧民街のバカ男”に扮してスパイ活動に勤しむ前半は、さながら下町人情喜劇。昭和30年代の日本の下町みたいな生活風景に驚きつつ、貧しくも逞しく生きる庶民の姿が悲哀を交えて描かれる。
だが、冷酷非情な最終ミッションが言い渡される後半は急転直下、主人公たちの破滅的な運命が壮絶なバイオレンスと共に展開。独裁政権の駒として使い捨てにされる彼らには、貧民街のささやかな幸せとて振り返れば眩しい。そんな束の間の青春の輝きが切なく胸に迫る。