バケモノの子 (2015):映画短評
バケモノの子 (2015)ライター2人の平均評価: 3.5
バケモノの師匠たちの家にゆっくり逗留したい
美術に魅了される。人間界とバケモノ界の間の、花瓶の置かれた石の迷路。バケモノ界の、南ヨーロッパかつアジアふうで、砂漠もあれば競技場もある風景。バケモノの師匠たちが、主人公に見せてくれる幻想の儚い美しさ。美術監督はジブリの「ハウルの動く城」「コクリコ坂から」「思い出のマーニー」に参加したという3人、大森崇、高松洋平、西川洋一。リアルな渋谷の街の澱んだ空気と、快晴のバケモノの町の空気は、湿度も成分もちゃんと違う。が、アニメのもうひとつの真髄である"動き"の魅力を感じさせるのは、一場面。渋谷の街路の上を、ある巨大な生き物の影だけがぬるりと移動する、その瞬間。こういう鮮やかな"動き"がもっと見たい。
ジャッキー世代のハートを貫く!
“ちょっと変わった”母と子の物語だった『おおかみこどもの雨と雪』に続き、“ちょっと変わった”父と子の物語。熊徹のモデルが『七人の侍』の菊千代なのは一目瞭然だが、孤独な少年が師匠に弟子入りする展開や関係性は、明らかに『ベスト・キッド』。しかも、次期宗師をめぐるライバルとの対立劇や格闘シーン、コスチュームまでカンフー映画そのものだ。もちろん、主人公・九太の成長を物語るうえで、ジャッキー映画おなじみの訓練シーンも、しっかり描かれているのだが、熊徹の足型を取った九太がそれに合わせて飛び跳ねるシーンでは、『スネーキー・モンキー/蛇拳』のオマージュ登場。まさか細田アニメがジャッキー世代のハートを貫くとは!