傷だらけのふたり (2014):映画短評
傷だらけのふたり (2014)ジョンミンにはとぼけたラテン音楽こそが似合う。
何はともあれファン・ジョンミンだ。狂犬ヤクザと繊細なロマンティスト、彼が演じてきた極端な両面性を存分に活かした当て書きといっていいキャラクターが、ボケた父親にだけ本心を吐露できる「“プロじゃない女”童貞」だとは(原題は『恋に落ちた男』)。ただ邦題に反し、傷だらけになるのは一方的な恋ゆえに身体も心も傷だらけになる高利貸ジョンミンひとり。昏睡状態に陥った父の借金を背負うヒロインも、心の傷は受けるけれどいわばメロドラマの法則に基づくもので“だらけ”というほどではない。終盤はいささかメロ度が過ぎるが、最後の最後は悔し涙の似合うジョンミンの愚かしさを的確に捉えた、愛しむべきラテン音楽なのだな。
この短評にはネタバレを含んでいます