さよなら、人類 (2014):映画短評
さよなら、人類 (2014)ライター2人の平均評価: 4.5
ロイ・アンダーソン世界の究極形にして入門編
自らのスタイルを絶頂に高めたロイ・アンダーソンの大傑作だ。ワンシーン&ワンショットによる絵画的構図のミニコント集だが、各エピソードの有機的な連鎖の中に歴史のイメージも交え、長編としてのうねりが見事に醸成されていく。
アナログセット主義や、複数の主体が同じフレームの中でギャグを同時進行させる語りは、やはりジャック・タチに近いが、決してハイブロウな笑いに終始するものではない。不器用に生きる庶民たちの群像模様は人懐っこい哀愁に満ちている。
4コマ漫画のスタイルの延長で、大河的な感動にのぼりつめた業田良家の『自虐の詩』等も連想した。ここには生きる事の根源を問う人間哲学がある。敬遠せずに観て欲しい!
もちろん、ランニングの人は出てきません。
『バードマン』を抑え、ヴェネチアで金獅子賞受賞!というと、ハードルも上がるが、相変わらずの脱力系、ロイ・アンダーソン監督作。『散歩する惑星』に始まる“リビングトリロジー最終章”であり、細部まで計算された構図や配色、そしてシュールなギャグは過去作同様、松本人志のコント好きならハマるはず(今回は、キスおばさんが…!)。主人公のサエない面白グッズ営業マン2人組は、まるで「ゴドーを待ちながら」の主人公で、実際にそれっぽいスケッチも登場。男色家の噂もあった自国の国王・カール12世や、アフリカの囚人がローストされる巨大オルガンのスケッチなど、“攻め”描写もあり、頭をフル回転させて挑んでみるのもいいだろう。