人生スイッチ (2014):映画短評
人生スイッチ (2014)ライター3人の平均評価: 3.7
ラテンの血が騒ぎまくる、怒りに駆られた人々の大暴走
分かりやすく言うならば、アルゼンチン版『バカヤロー!』。人生のスイッチ…というより怒りのスイッチを押してしまったばかりに、とんでもない事態に巻き込まれてしまう、もしくは引き起こしてしまう人々を全6話のオムニバス形式で描いていく。
それにしてもみなさん、ラテンの血のなせる技なのか、怒りに駆らてからの大暴走の手に負えないこと(笑)。まあ、結局は誰もが後悔先に立たずと相成るんですけどね。
痛烈なブラック・ユーモア精神と猪突猛進なハイテンションは、さすがペドロ・アルモドバルが製作を買って出ただけのことあり。自業自得な顛末に意外性はあまりないけれど、反面教師的な風刺小話集としては十分楽しめる。
怒り爆発の是非を自問自答させられた
日本でもアンガーマネージメントの認知度が高まりつつあるけれど、未熟な私は些細なことでイラつきっぱなし。歩きスマホとか歩道を疾走する自転車を見かけると額に「怒」マークが出る。小心なので心の中で舌打ちするだけのルサンチマンだが、もしも怒りを爆発させたら? この映画はそんな妄想を満足させてくれるユニークな試みが詰まっている。もちろんお国柄や文化の差に「?」と引く部分もあるが、怒りに共感する逸話では「いけ!」と尻馬に乗る。描き方によってはホラーになるところを笑いで包んだ監督のセンスに脱帽。猛暑でイライラする人が増えている夏、本作を見て、怒りを解き放つことの是非を自問自答してほしい。
やはり、他人の不幸は蜜の味
『バカヤロー!』シリーズや「世にも奇妙な物語」の姉妹編的として放送された「悪いこと」を思い起こさせる、容赦なしのブラックコメディ6本立。男女の復讐劇アリ、愛憎劇アリ、『激突!』のオマージュアリと、カッチリとした統一性はないが、欲望むき出しで、やる気スイッチならぬ、人生スイッチを押したことで、一気にヤバい状況になる男女の顛末がテンポよく描かれる。日本で馴染のあるスターは出てないが、アルモドバルお墨付きの新鋭監督の腕は確かで、オチもさまざま。ネットで無料配信中の第1話のインパクトがデカすぎるあまり、後を引きずる可能性もあるが、後でどれが好きか、みんなで盛り上がれるのも一興である。