みんなのための資本論 (2013):映画短評
みんなのための資本論 (2013)ロバート・ライシュの魂の沸騰
まず際立っているのは主人公の経済学者ロバート・ライシュの「役者力」だ。愛車ミニクーパーから降りたち、小柄な体にエネルギーをたぎらせ、カリフォルニア大学バークレー校の貧富論の講義ではスタンダップ・コメディアンのように学生たちを魅了する。その話芸と人間味で単なる啓蒙ドキュメンタリーの域を圧倒的に超えてしまう。
講義の内容は米国の格差社会の根っ子に突っこんでいくマイケル・ムーア×トマ・ピケティ的なものだが、監督のJ・コーンブルースが重視するのはライシュの肉体と肉声の熱。その生々しさに「映画」の価値が宿る。彼が学生に贈る最後の言葉に、筆者は『独裁者』のチャップリンの有名なスピーチを重ねていた。
この短評にはネタバレを含んでいます