フランス組曲 (2014):映画短評
フランス組曲 (2014)原作者の鋭い観察眼が息づくナチ占領下フランスの日常
ドイツ人将校と民間女性の許されざる愛を軸としつつ、ナチス占領下フランスの日常を丁寧に再現していく。
侵略者に媚びへつらう者、黙って息をひそめる者、ささやかな抵抗を試みる者など、立場によって態度や姿勢も様々。そこには善も悪もない。誰もが生きるために必死だ。ドイツ軍の兵士たちだって、制服を脱げば大半が普通の若者。命令を遂行しているに過ぎない。そうした状況下での人間同士の複雑な心の触れ合いや葛藤に、ホロコーストの犠牲となった原作者の冷静で鋭い観察眼が息づく。
リアリズムと叙情性を兼ね備えた演出は堂々たる風格。平時であれば幸福になれたであろう主人公2人の皮肉な運命が哀れを誘う。
この短評にはネタバレを含んでいます