ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります (2014):映画短評
ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります (2014)ライター3人の平均評価: 3.3
NY不動産売買を疑似体験しましょう!
子供がおらず、余生を考える老夫婦の来し方が家の住み替えを通してつまびらかになる物語。アパートの競売が進むなか、夫妻は異人種婚が違法な時代に結ばれたことや不妊の苦しさを味わったことなどが徐々に明らかになる。ブルックリンを闊歩するヒップスターの先取り? 愛犬の入院騒動以外にたいした事件は起こらないまま、夫妻が下す決断が「賢者の贈り物」を思わせ、心温まった。ニューヨークに住んでみたいけど家賃がメチャ高らしい。ましてや家の購入なんて夢のまた夢。でも、この映画でNY不動産売買を疑似体験できて大満足。仕切り屋の不動産レディを演じるシンシア・ニクソンがコミック・リリーフとしていい味を添えていたしね。
住民の人種も個性も豊かな街N.Y.への愛が詰まった小品佳作
長年住み慣れたブルックリンのアパートを売り払うことに決めた老夫婦が、改めて40年間の結婚生活を見つめ直すことになる。なにかと競争の激しい住宅事情やテロの不安に揺れる今の世相を織り込みつつ、人種も個性も色とりどりな人々が肩を寄せ合う街ニューヨークへの愛情をめいっぱい詰め込んだハートウォーミングな作品だ。
仲睦まじい老夫婦を演じるダイアン・キートンとモーガン・フリーマンのなんとチャーミングなこと!お喋りで世話焼きな姪役のシンシア・ニクソンも好演。ダイアンの若い頃を演じる女優さんはドラマ『Hawaii Five-0』のダニーの奥さん役の人だが、これが結構よく似ていて驚かされる。
まさに「変わりゆくものと、変わらないもの」の物語。
M・フリーマンが画家という設定が効いている。40年前は進歩的な若者だったカップルが、今は老夫婦となり古い住処の処理に悩む。N.Y.ブルックリンの街には9.11以降の緊張感も……。
グッとくるのは時代の変化の中で、自分たちのライフスタイルをいかに快適に続けていくか、という主題を問いかけている事。例えば東京でも20年前と現在の渋谷は“意味”がかなり変わってしまった。不動産というモチーフは生活・文化・経済など都市空間の様々な顔を立体的に見せてくれる。
『アニー・ホール』のD・キートン、『SEX AND THE CITY』のC・ニクソンと象徴的な配役にも歴史の層を持たせてある。丁寧な作りの佳品だ。