ソング・オブ・ザ・シー 海のうた (2014):映画短評
ソング・オブ・ザ・シー 海のうた (2014)ライター2人の平均評価: 4.5
EGO-WRAPPIN'中納良恵の吹替版も凄そう。
ケルト民話にあるアザラシの妖精セルビーは、ジョン・セイルズの『フィオナの海』で知った題材。でも今回の監督は、中世装飾福音書の挿絵がそのまま動き出したような『ブレンダンとケルズの秘密』(大阪ヨーロッパ映画祭で上映)で、アイルランド美術の魅力をアニメーションによって知らしめたトム・ムーアだ。今回も全篇にわたって円形あるいは半円をモチーフとした幾何学的かつグラフィカルなスタイルで魅せるが、物語は現代であって、人物キャラはどこか東映動画的で動きも多い。羽衣伝説にも通じる物語だし、監督のジブリ好きは周知のことでもあるしで、やはり欧州伝説の土台がある『崖の上のポニョ』との関連性を想わせるのも面白い。
ノスタルジックで想像力豊かな映像に目も心も奪われる
人間と妖精が共存する神話的なアイルランドの田舎を舞台に、妖精の血を引く兄妹の数奇な冒険が描かれる。それはもう美しくて愛らしい、幻想的でドリーミーなアニメーションだ。
日本のアニメにインスパイアされたという作画デザインは、ジブリや東映アニメ、「まんが日本昔ばなし」は勿論、日本アニメに影響を与えたソビエトアニメの数々(特に「野の白鳥」)やロッテ・ライニガーのシルエットアニメをも彷彿とさせ、そのノスタルジックで想像力豊かな映像に目も心も奪われる。
家族の絆の大切さを謳いあげた、切なくも温かい物語にもキュンとくる。全てのシーンを切り取って額縁に入れ、部屋中に飾りたい。そんな衝動にも駆られる傑作。