断食芸人 (2015):映画短評
断食芸人 (2015)足立正生は独自のやり方で「今」にタッチする
3.11を導入に置き、ハプニング、カフカ原作の寓話性、現代という三角形のリング。物言わぬ「ネットで有名な断食男」の“意味”を世間が勝手に貼りつけていく……ばかりか、死のう団、イスラム国など歴史のトピックが次々繰り出される。
面白いのは、それらがいかにもパロディックな虚構性で差し出されること。まるで永遠に回り続ける幻燈絵。諸行無常の視座も感じるが、皮肉にも登場する僧侶は単なる“世間”の一部である。
その中でかろうじて特権性を保持する断食芸人は、カフカ流の自己疎外とは同軸の真逆だろう。「声をあげない」限りは世界の定点で在り続ける、という構図は、今の社会把握としてかなり正確ではないかと思う。
この短評にはネタバレを含んでいます