あやつり糸の世界 (1973):映画短評
あやつり糸の世界 (1973)
73年にファスビンダーが創造した仮想現実世界
鮮やかなオレンジ、イエローのプラスチック製の流線形の家具。青みがかった光を放つモニター。あらゆるところに置かれて世界を映し出す鏡、鏡、鏡。他人の見ていないところでは人形か死体のように無表情になる美貌の女たち。原作のダニエル・F・ガロイの「構造世界」は64年のSF、映画は73年製作、仮想現実はSFの定番モチーフだが、「ベロニカ・フォスのあこがれ」「リリー・マルレーン」のドイツ監督ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーがそれをどう視覚化したかが興味深く、画面に見入ってしまう。ロケ地はパリ。映像の鮮明な色調は、この監督の映画16作を撮ったミヒャエル・バルハウスの監修でデジタル修復されている。
この短評にはネタバレを含んでいます