BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント (2016):映画短評
BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント (2016)ライター3人の平均評価: 3.3
スピルバーグが久々に手がける家族向けファンタジー
近年大人向けの題材が続いていたスピルバーグの新作は、児童文学が原作のチャーミングで心温まるメルヘン版「E.T.」だ。
お転婆な孤児の少女と心優しき巨人の友情と冒険。誰もが寝静まった深夜のロンドンの街を闊歩する巨人の影、牧歌的で神話的な空気に包まれた巨人の国、無数の光が煌く幻想的な夢の国など、絵本からそのまま抜け出てきたような映像は抜群に美しい。マーク・ライランスの顔をそのまま使った巨人の合成処理も見事である。
英国女王と軍隊が巨人に味方するという、絵空事過ぎる展開に違和感を覚える向きもあるかもしれないが、ここに登場する英国はパラレルワールドと捉えるべき。実際、本作の英国女王に名前はない。
まさに動く絵本!
『チャリチョコ』のティム・バートンでなく、スピルバーグがロアルド・ダ-ルの原作を手掛けることは意外に思えるが、ゆったりとしたストーリー展開や、ロングショットで見せるBFGと少女の会話など、あくまでも分かりやすさを追求。“子ども向け”という前評判通り、絵本のページをめくっている感覚もあり、毒っ気は少ない。ただ、暗闇から現れた巨人に連れ去られる怖さなど、どこか忘れかけていたモノを思い起させるファンタジー要素は満載。ロングコートで木のフリをしたり、ビルの陰で街灯のフリをするBFGの隠れ身の術も微笑ましいが、ここはスピルバーグが本作を受けた要因であろうクライマックスの展開。妙に気合い入っています!
ホラ話系民話のようなコミカルな味もたっぷり
夜に見る夢は、どこか此処とは別のところで生まれて、やわらかな光を放ちながら宙を浮遊するもので、それを心優しい巨人が集めて素敵な配分に調合し、夜の闇に紛れてそっと人間に吹き込んでくれる。そうした美しい情景の数々が画面いっぱいに広がる。
それに加えて、ホラ話系民話的なコミカルな味もたっぷり盛り込まれているのが、本作の魅力。中でも、巨人が女王に会いにバッキンガム宮殿に行った時の、召使いたちが巨人を人間の客と同じようにもてなそうとして四苦八苦するシーンの愉快さ。また、巨人が、夜の人間の街で、人間の目から姿を隠すために使うテクニックの数々も楽しい。