グリーンルーム (2015):映画短評
グリーンルーム (2015)ライター3人の平均評価: 3.3
ネオナチの真の恐ろしさに迫る快作スリラー
閉塞的な状況をとらえたスリラーはよくあるが、本作の面白い点は人間の悪意、ひいては暴力に取り巻かれて身動きがとれなくなることだ。
ネオナチを敵に回し、取り囲まれて逃げられない。そのネオナチ連中も単に暴力的ではなく、知性派のボスに仕切られている。機を見るに敏な極右政党が台頭する欧州の状況を連想しつつ、そのリアリティにゾクゾクさせられる。肉体ザックリの瞬間的バイオレンスもショックの点で効果的だ。
主演の故A・イェルチンには以前、取材した際に、1970年代のパンクが好きで、自身もバンドをやっていると語っていた。繊細なパンクスという点で、彼本人とかぶるものがあり、熱演を興味深く見た。
パンクロッカーVSネオナチ版「要塞警察」
売れないパンクバンドがド田舎の怪しげなライブハウスで演奏したところ、運悪く殺人事件の現場に遭遇する。店はネオナチの巣窟。違法行為を隠すため警察沙汰を避けたい店側は、手っ取り早く目撃者を皆殺しにすることに。かくして、楽屋に籠ったパンクロッカーVSネオナチ軍団の凄まじい攻防戦が始まる。
シンプルな設定の中にスリルとサスペンスと血みどろバイオレンスが満載。それでも期待したほど過激でヤバい印象を受けなかったのは、もしかすると筆者が日頃から悪趣味グロ映画ばかり見慣れているせいかもしれないが、「要塞警察」系のワンシチュエーション映画として手堅い出来栄え。それにしても、アメリカの田舎ってやっぱ怖えな…。
青春でパンクバンドでホラー
青春でパンクバンドでホラーで残虐。「悪魔のいけにえ」から脈々と続く、アメリカの田舎はやっぱりヤバイ系ホラーの系譜でありつつ、いきなりの残虐描写が現代的。そのうえ、バンドものでもある。監督自身による脚本は、オープニングとエンディングのセンスと、ときどきのユーモアがいい感じ。そのいろんな要素が違和感なく共存している。
本筋とは関係なく、パンクバンドが小さなライブハウスで演奏するシーンの、ベタついた床の感じやホコリ臭い匂いが生々しいと思ったら、監督自身がかつてパンクバンド少年だったそう。デッド・ケネディーズの「暗殺」が彼にとって初めてのハードコア・パンクだったそうで、そんな観点から見ても楽しい。