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わたしは、ダニエル・ブレイク (2016):映画短評

わたしは、ダニエル・ブレイク (2016)

2017年3月18日公開 100分

わたしは、ダニエル・ブレイク
(C) Sixteen Tyne Limited, Why Not Productions, Wild Bunch, Les Films du Fleuve,British Broadcasting Corporation, France 2 Cinema and The British Film Institute 2016

ライター2人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4

平沢 薫

ケン・ローチ監督は声高に糾弾しない。静かに語る

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 個人には如何ともしがたい状況を、声高に何かを糾弾する形ではなく、どこにでもいそうなひとりの人間の行動として静かに描くところが、英国監督ケン・ローチ流。一人の初老の男性の生活が、まるで隣に住む人の姿がなんとなく目に入ってくるような当たり前さで、静かに淡々と描かれていく。なのに、深いところで怒りをかき立てられ、激しく心を揺さぶられる。
 本作は、人に手を差し伸べることの難しさからも目をそらさない。主人公は困っている人を助けるときには躊躇しないが、自分が助けられることに対しては無意識に抵抗していたことに気づく。そうした人間心理の細やかな描写が、ドラマの味わいを深めている。

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

「怒れる若者たち」の魂がいまも燃えるジジイの出力100%!

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

英国のフリーシネマやキッチンシンクドラマの系譜がひとつの沸点に達した。シンプルな3コードで80歳のK・ローチが言いたい事を歯切れよく言い切り、何の飾り気もなくステージを降りていくようなかっこ良さ。引退宣言を撤回して撮っただけに原点回帰の色も強いだろうが、『夜空に星のあるように』や『ケス』ではなく、当時国民的人気となったTVシリーズ『キャシー・カム・ホーム』に近いのが興味深い。

大衆的な判り易さを志向しているぶん教条性もくっきり目立つが、主演のベテランコメディアン、D・ジョーンズの愛敬と人間味が作品に弾力を加える。このおっさんがスプレー缶で“ある壁”に書くグラフィティは最高にパンクだ。

この短評にはネタバレを含んでいます
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