アシュラ (2016):映画短評
アシュラ (2016)ライター2人の平均評価: 4.5
狂っているのはカーアクションだけじゃない!
キム・ソンスといえば、いつも設定は面白そうなのに、最終的にまとまりがない作品に仕上がる残念な監督というイメージが強い。だが、今回はそれが奇跡的に面白い方向に転がった。とにかく、前半パートのリズムがおかしいのだ。さらに、すべてのキャラに対して感情移入ができないことに戸惑いながらも、やりすぎなヴァイオレンス描写に引きこまれていくと、明らかに狂っているカーアクションに突入! この感覚はリンゴ・ラム監督作に近いといえる。アート色の強い『お嬢さん』『哭声』と並べて評価すべきでない、ド直球の韓国アクション・エンタメ。あえて『哭声』後に観ると、ファン・ジョンミンVSクァク・ドウォン戦の面白みも倍増する。
善人が一人も登場しない斬新で画期的な怪作!
元ヤクザな悪徳市長を筆頭に、彼の義弟である悪徳刑事や「大義のための小悪はOKっしょ」と違法行為も平気な検事などなど、登場人物が全員ワル。汚職に恐喝、殺人、暴行、薬物売買、なんでも来い! 悪事が悪事を生み、誰もが地獄まっしぐらという流れに唖然呆然。こんな映画、今まで見たことなかった。斬新で画期的で、キム・ソンス監督に比べるとタランティーノはまだまだ甘かったな〜。生き延びルためならモラルや正義なんてゴミと一緒に捨ててしまう人間の本能がずんずんと迫ってくる物語に痺れる。見終わった時の虚脱感というか疲労感は半端じゃないので、体調のいい日に見てください。