バーニング・オーシャン (2016):映画短評
バーニング・オーシャン (2016)ライター3人の平均評価: 3.3
破滅に向けたシンプルなカウントダウン構成がサスペンスを倍加
怒り狂うモンスターの如き炎がマーク・ウォルバーグの演技を食うほどだ。安全を軽視した利益第一主義の上層部vs.現場を熟知するベテランという対立構造は、『タワーリング・インフェルノ』由来ともいえるパニック映画の基本だが、群像劇に付きものだった、甘ったるいロマンスやコメディ要素を捨象し、カタストロフに向けたシンプルなカウントダウン構成がサスペンスを倍加させる。爆発大好きなファンを堪能させるのはもちろん、社会派エンタメとしても堅実な作り。近過去の未曽有の事故を描くヒーローなき実話ディザスター。ハリウッドの懐の深さを感じる。
同じ主演・監督コンビながら、『ローン・サバイバー』に及ばず
バカ映画の極みだった『バトルシップ』から、徹底して硬派な『ローン・サバイバー』という、あまりの振り幅の大きい作品を手掛け、職人臭が一気に増したピーター・バーグ監督。ふたたびマーク・ウォールバーグを主演に迎え、今回もリアリティ重視のお仕事映画に挑んだが、ひたすら事実関係を並べただけで終わってしまった感アリ。確かに、泥水噴射~大爆発~大火災へと続く、災害つるべうちはかなりの迫力なのだが、火災繋がりで『バックドラフト』のカート・ラッセル、憎まれ役でジョン・マルコビッチが出ようが、期待したほど見せ場はなし。よって、パニック映画としての醍醐味も、カタルシスも、あまり感じられない結果になった。
メキシコ湾原油流出事件の裏側を教えてくれる
マーク・ウォルバーグとピーター・バーグは今後も一緒にこのような実話にもとづく社会派アクションスリラーを作っていくつもりでいるので、これを「ローン・サバイバー」と6月日本公開の「パトリオット・デイ」を含めた三部作と言うのは違うかもしれない。それでもあえてそう言うと、真ん中に当たる今作は、他のふたつより惹きつける力に欠ける。理由のひとつに、他のふたつが最初から最後までアクション、ドラマ、葛藤が常に含まれているのに対し、今作は前半が状況説明、後半がアクションになっていることがある。それでも、2010年のメキシコ湾原油流出事件について多くの人が知らなかったことを教えてくれるこの映画は、見る価値ありだ。