光をくれた人 (2016):映画短評
光をくれた人 (2016)ライター2人の平均評価: 5
愛だけじゃなく、もっと深いモノ
確かに、子を授かることの出来なかった夫婦が乗り越えた愛の物語かも知れない。
だがよりトムの心情にフォーカスすると、戦争体験者の贖罪と赦し物語であることが見えてくる。
帰還した彼が、自分の思いとは裏腹に英雄と崇められる居心地の悪さ。
その喧騒を逃れるように移り住んだ孤島で、彼を試すがのごとく流れ着いた瀕死の独人と赤子。
元敵の子を養育することは、彼にとっての贖罪だったのかも知れない。
だが結果、さらに重い十字架を背負ってしまう。
原作小説の題は「海を照らす光」。
残酷な運命に対して、ラストで神に導かれるように光差す方へ向かうトムの表情が清々しく、原題の意味の方を噛み締めたくなるのだ。
間違った決断が導く、悲劇的な行く末
普通の人が、ちょっとした心の迷いのせいで大きなトラブルに巻き込まれていくという話が、私は昔から好きなのだが、今作もまさにそのひとつ。立て続けに流産と死産を経験し、深い悲しみにくれる夫妻の前に、一隻のボートが到着する。ボートには男性の死体と生後間もない赤ちゃんが乗っていた。夫は本土に報告しようとするが、妻は赤ちゃんを手放すのを嫌がる。家族がその子が自分たちの子だと信じる中、赤ちゃんはすくすくと育っていくが、真実、そして道徳心は、彼らを放ってはおかない。監督は、心の奥の葛藤を描くことにかけては最高のデレク・シアンフランス。とてもせつないが、最後には少し希望も感じさせてくれる傑作だ。