漫画誕生 (2018):映画短評
漫画誕生 (2018)「時代は変る」中で
昨年の東京国際映画祭で感嘆した力作。まず着想がいい。北沢楽天の青年期と、第一線を退いた老年期を描くことで、明治から昭和――「手塚治虫以前」の漫画史を概観する。ジャンルを超えた多士済々な実在の傑物たち(宮武骸骨、岡本一平、福沢諭吉……)が登場する歴史絵巻としても充実。そして時代と表現、仕事をめぐる射程の長い問いかけにも唸る。
イッセー尾形のカリスマ性、若い役者たちの良さ、篠原ともえの好演。監督・大木萠(『花火思想』)の正攻法の取り組みに骨太の意志を感じる。併せて上映したい映画を挙げるとしたら新藤兼人の『北斎漫画』か。また本作を観て戦時下の漫画家たちの戦争協力というテーマに興味が湧いた。
この短評にはネタバレを含んでいます