ブラッド・ファーザー (2016):映画短評
ブラッド・ファーザー (2016)ライター3人の平均評価: 3.3
アウトロー親父による贖罪のロード・ムービー
監督作『ハクソー・リッジ』がオスカー候補となり、役者としてもにわかに復活の兆候を見せるメル・ギブソンが、まるで自身をモデルにしたような(?)荒くれアウトロー親父を演じる。それだけでも映画ファンなら必見だろう。
世間から身を隠すように暮らしている元服役囚の父親が、犯罪に巻き込まれた娘をマフィアから守るために戦う。奇しくも『ローガン』と似たようなストーリー展開だが、こちらは自分のせいで道を踏み外しかけた我が子への贖罪がテーマだ。
また、決死の逃走劇を通じて現代アメリカ社会の辺境に打ち捨てられ、その存在すら忘れかけられた人々にスポットが当てられていく点も見どころ。やはり基本は西部劇なんだよね。
無駄がなく、良くできた娯楽スリラー
B級っぽいといえばそうかもしれないが、無駄がなく、娯楽性も感動もあり、良くできている。メル・ギブソン演じる主人公は、元アル中で、刑務所入りもしたダメ親父。彼の 娘もダメなティーンエイジャーで、危険な麻薬カルテルから追われることに。ずっと疎遠な関係だったとしても、娘はやはりかわいいものらしく、彼は自分を犠牲にしても、 娘を守ろうとする。
飲酒運転で逮捕されて以来、ハリウッドで干されてしまったメルギブが、元アル中の落ちぶれた男を演じるとは、なかなか勇気のある選択。監督作「ハクソー・リッジ」で見事なカムバックを果たした彼だが、今作では俳優としてもまだまだすごいことを証明する。
メル・ギブ版『96時間』<『ローガン』
西部劇愛たっぷりに、ヒゲ面オヤジが訳アリ少女と繰り広げる逃避行を描くあたり、同時公開される『LOGAN/ローガン』との共通点も多い4年ぶりのメル・ギブ主演作。だが、こちらはいかにもジャン=フランソワ・リシェ監督作といえる、粗削りなB級テイストがウリ。唐突な展開のなか、バイクやトレーラーハウスの襲撃などのアクション・シーンだけでなく、ドン引きするケガ自慢や耳噛みつきなど、メル・ギブ過去作のオマージュが満載。しかも、「さすらいのライダー」ことマイケル・パークスの遺作として観ると、かなりグッとくる88分である。ただ、アンドーさんことディエゴ・ルナ案件としては、かなり弱い。