スキップ・トレース (2016):映画短評
スキップ・トレース (2016)ライター3人の平均評価: 3.7
陽性アクションで魅せる正統派ジャッキー映画
久々にジャッキー映画らしいジャッキー映画を見た感。工場の足場やベルトコンベアーを活かし、その場にある物を武器にする、いかにもなアクション。ジャッキーも体がよく動いており、その健在ぶりが嬉しくなる。
基本的にロードムービーで、モンゴルや中国のさまざまな風景を見せてくれる観光的要素もある。田舎の祭や生活にまぎれながら敵と攻防を繰り広げるさまが、どこかのどかで妙味。
ノックスヴィルとの相性もよく、騒々しい彼と冷静なジャッキーの対比はバディムービーとしてもバランスがよい。しばらくは北京を拠点に映画製作を行なうというレニー・ハーリン監督のコミック調演出もジャッキー映画の陽性のノリにハマった。
アクション以外にも中国ならではの見どころが満載
どうしても、中国共産党の広告塔という立ち位置が見え隠れしがちな近年のジャッキー映画だが、今回はそうした色眼鏡抜きで楽しめる純粋な娯楽活劇。とはいえ、悪玉ボスの右腕が韓国人だったり、敵の敵は味方的な絡み方をするロシアン・マフィアだったりと、いろいろポリティカルな深読みは出来るかもしれない。あ、それって俺の悪い癖か(笑)。
犯罪王を倒すために必要な証人がアメリカ人の詐欺師で、ロシアへ高飛びした彼をジャッキー扮する刑事が香港へ連れ戻すというストーリーはいたって単純だが、道中で巡り合う遊牧民族や少数民族との触れ合い、雄大な自然を捉えた映像など、アクション以外にも賑やかな見どころが詰まっている。
これが観たかったジャッキー映画
『シャンハイ・ヌーン』+『ラッシュアワー』なバディムービー感に、『シティハンター』な後見人設定、『WHO AM I?』的なご当地特産物を使ったアクションなど、過去のジャッキー映画の要素満載なこともあり、これが観たかった感たっぷりの“ジャッキー版『ミッドナイト・ラン』”。ハリウッドから中国に出稼ぎにやってきたレニー・ハーリン監督(次回作も中国時代劇)のバブリーな大作感がプラスに働いているだけでなく、ジャッキーの中共広告塔臭がないのも嬉しい。さすがにド肝を抜くアクションはないが、一応ドンデン返しもある展開に、エリック・ツァンやリチャード・ン、マイケル・ウォンとの共演など、とにかく安心して観られる。