丸 (2014):映画短評
丸 (2014)現代社会の不穏な空気を捉えた寓話的不条理ミステリー
リストラされた父親に無職ニートの息子、認知症の祖母を介護して疲れ切った母親。そんな日本の暗部を背負ったような「普通」の家庭に、突如として謎の球体が現われ、警察やマスコミを巻き込む不可解な事件が起こる。海外の映画祭で高く評価された新人・鈴木洋平監督の長編処女作。約4年をかけて、ようやくの国内正式上映だ。
SFというよりも寓話的な不条理ミステリー。人を食ったようなストーリーはけっこう難解だが、中流階級が崩壊しつつある庶民の現実を軸にしつつ、警察に象徴される権力の横暴や隠蔽体質、倫理観なきマスコミの独善と無責任を巧みに織り交ぜることで、現代社会を覆う不穏な空気を敏感に捉えている点は面白い。
この短評にはネタバレを含んでいます