リュミエール! (2016):映画短評
リュミエール! (2016)ライター3人の平均評価: 4.3
100年以上の時を経て甦る普遍的な日常の営みに感動
映画の生みの親、リュミエール兄弟の残した膨大な作品群から、108本の短編を厳選してまとめたアンソロジー。同様の企画は過去にもあったが、今回は滅多に見る機会のない貴重な映像が含まれているし、なによりも決して「映画史のお勉強」に陥ることのないエンタメ性の高さが魅力だ。
映し出されるのは、今から100年以上も前の世界。日本を含む世界各地で撮影された映像には、もはや失われた街並みや文化、風俗が記録されているが、しかしその一方で変わらないものがある。それは、可愛い我が子を見つめる両親の眼差し、カメラに向かって手を振る人々の笑顔、ささやかな生活の営みだ。そのかけがえのない瞬間の一つ一つに胸が熱くなる。
映画のはじまり、だけじゃなかった。
工場から出てくる労働者の姿を、50秒ほど撮っただけの世界初の実写商業映画『工場の出口』からリメイク、そしてヴァージョン違いなるものが存在したことを教えてくれる“映画の教科書”。『タイタニック』に『七人の侍』と、古今東西の名作に影響を与えたと言い切るリュミエール研究所ディレクターの過剰すぎるナレーションには、ときに苦笑してしまうが、それを差し引いても衝撃映像の連続だ。それだけではなく、「赤ん坊の食事」などでは「加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ」を経て、世界に渡り、今のYouTubeに至る“おもしろ投稿ビデオ”を、120年前にやっていたことまで判明。とりあえず、カメラを回したい衝動に駆られる!
21世紀、「二回目のリュミエール」のために
3DやVR、IMAX、又はインターネット動画など、映画/映像環境の現在について語る機会がある時、必ず話題に出るのがリュミエール兄弟のこと。脱物語(物語の簡素化)と体験(体感)に向かう21世紀の先端と、19世紀末に映画が「発明」された時の驚きの原初は、いかに通じ合うか。それを考える為の格好の一本!
1895年~1905年に撮られた50秒ワンカットの数々。『工場の出口』の別Versionをリメイクの源とするなどT・フレモーの解説も素晴らしい。『水撒き人』のギャグ(今観るとYouTuber的)、『赤ん坊の初歩行』のサスペンス……映画の基本が「発明」されていった最初期のワクワクが鮮明に伝わってくる!