まともな男 (2015):映画短評
まともな男 (2015)![まともな男](https://img.cinematoday.jp/a/T0022412/_size_640x/_v_1510815370/main.jpg)
ライター2人の平均評価: 4.5
NOと言えない男の地獄巡り
これ、NOと言えない日本人には、少なからず身につまされる映画なのではないだろうか。争いを避けたいがために相手のご機嫌ばっかり伺っているような中年男が、みんなにいい顔をしようとして重ねた小さな嘘の数々が、雪だるま式にどんどんと膨れ上がっていき、まるで悪夢のような事態を引き起こしてしまう。
平和主義という名の事なかれ主義。そんな主人公の八方美人が次々と裏目に出て行く展開は、「確かに、俺もそんなこと言われたらNOとは返せないかも」なんて場面も多々あるゆえ、思わずゾッとさせられる。誰しも他人から嫌われたくはない。しかしそれでも毅然とした態度を取らないと、大きな過ちを犯してしまうこともあるのだ。
こういうのを“残念な人”っていうんでしょうね。
主人公トーマスのセラピー場面でスタートするので彼が悩みを抱えているのがわかっていて、中盤までは「いつ爆発するのだろう?」とハラハラ。自分勝手な妻と娘、ある事件の被害者となった少女の不穏な言動でストレス過多となるトーマスに哀れを感じもするが、それもつかの間。彼のマイナス面がどんどん見え始める。主体性はなく、臭いものには蓋をする主義で、過ちを隠すためにさらなる過ちを重ねる。ありがちな欠点だし、私も人のことを責められないけど、スリーストライク・アウトって感じ。理解はできるけど共感はできず、こんな“残念な人”にならないようにと自戒。さらには自分の道徳観を再確認したい気にもさせられた。