ヴァレリアン 千の惑星の救世主 (2017):映画短評
ヴァレリアン 千の惑星の救世主 (2017)ライター3人の平均評価: 3
ポップでオフビートなリュック・ベッソン印のSF大作
『スター・ウォーズ』の世界観にも影響を与えたとされる、伝説的フレンチ・コミックの実写映画化。リュック・ベッソン監督にとっては、『フィフス・エレメント』以来の本格的SF冒険活劇だ。
ポップでキッチュでオフビートな語り口はベッソン作品ならでは。エイリアンのキャラデザインが『スター・ウォーズ』に酷似しているのは、その出自ゆえ仕方ないだろう。とはいえ、悲劇の異星人パール人が『アバター』っぽいのは少々苦笑い。
基本は何も考えずに楽しめる痛快な娯楽大作。ただ、過去の戦争犯罪を隠蔽しようとする軍人の陰謀は、日本人にとって少々耳が痛いかも。中国資本が入っているのはそのせいか?なんて勘繰ったりして。
おきらくごくらく、スペースオペラ
アロハシャツ姿&ややチャラ男キャラのデイン・デハーンが、『ロミオ+ジュリエット』のディカプリオを思い起こさせるが、やっぱりベッソン。胸元が気になるカーラ・デルヴィーニュ(と「スペイス・オディティ」が流れるオープニング)を観るための映画である。もちろん、『フィフス・エレメント』の延長線上であり、メカやガジェットなどの圧倒的なヴィジュアルに対し、ユルいアクションとギャグ満載という20年前から何も成長してないあたりも“永遠の中2病”ベッソンらしい。『トリプルX:再起動』に比べ、クリス・ウーの使い方も問題あるが、THE ALFEEが声をアテてるモンスター、ドーガン=ダギーズの出番が意外と多いのに驚き!
ベッソン宇宙の色彩の明るさ、鮮やかさがワクワクさせる
ベッソン監督のSF宇宙の明るさは新鮮。宇宙なのにクリアな青空がよく似合う。3236種類のエイリアンが交易中の西暦2740年のこの宇宙は、各惑星に広がる驚異的な光景も、多様なエイリアンたちの容姿も、その色と形に、いい意味での純真さ、大人の中の子供の心がワクワクする感じが溢れているのだ。なるほど原作コミックは'67年連載開始のSF冒険活劇で、監督が原作に夢中になったのは10歳のとき。監督は、10歳の少年の心をときめかせた世界をそのまま映像化しようとしたのに違いない。中でもエイリアン、パール人の美しさにはうっとり。彼らの容貌は人種や性別を超越した美を意図している、などと思わなくても美しい。