マスカレード・ホテル (2018):映画短評
マスカレード・ホテル (2018)ライター3人の平均評価: 3.3
皆が求めるキムタクらしさが活かされた華やかな娯楽ミステリー
主人公刑事役の木村拓哉は、東野圭吾が原作執筆時に思い浮かべていたとも明かしているとおり、まさにピッタリ。
また、何度も組んでその魅力を知り尽くしている鈴木雅之監督が、「似た役が多い」といった雑音をねじふせるかのように、ハマリ役を演じた時のスター俳優としての木村の魅力を最大限に活かしてみせている。
次々と現れる豪華な出演者たちの顔ぶれも面白いが、木村と過去に共演経験のある俳優たちが多いことは、その絡みを楽しめるだけでなく、犯人や事件の鍵を握る役者を特定させにくくさせる効果も。
鈴木監督らしい特徴的な画づくりも適度に活かされ、誰もが気軽に楽しめる華やかな娯楽ミステリーに仕上がっている。
スターの存在感を活かしつつ、上質のエンタメに
緩やかなミステリーに始まり、興味深い人間ドラマから、やがて緊密なサスペンスへ。展開にゆとりを感じさせつつも、それぞれに見応えがあり、一気に楽しんだ。
肝となるのは中盤の人間ドラマで、刑事という仕事とホテルマンの仕事の違いをじっくり描いたことが中後半の主人公たちの動きに活きてくる。感情移入しやすいことはもちろんだが、それぞれに窮地に追い込まれる彼らの緊迫した状況が生々しく伝わる。
木村拓哉と長澤まさみのスター映画とし見ても、それぞれの個性が映えた、良質のエンタテインメント。ラストのサービス的なエピソードは物語の流れを考えると余計だが、スター映画と割り切れば気にならない。
まさにフジテレビ制作の正月映画
これまで松たか子、綾瀬はるか、北川景子と、木村拓哉の“相棒”を変えてきた「HERO」の流れを完全に汲むだけでなく、グランドホテル…いや『有頂天ホテル』形式。「HERO」チームから、まさかのそこに勝地涼や、「さんタク」繋がりの明石家さんままで、入れ替わり立ち代わり登場する豪華キャストをさばき切る鈴木雅之監督の手堅い演出も健在だ。まさにフジテレビ制作の正月映画として楽しむには問題ないが、“犯行が起きるのを待つ設定”に若干ムリがあるほか、各エピソードも人情系多めということもあり、サスペンスとして緊張感に欠けるのは事実。そのため、133分も長尺に思えるが、よく言えば満腹感を得られる。