長江 愛の詩 (2016):映画短評
長江 愛の詩 (2016)画面に身を委ねると、長い船旅が始まる
スクリーンに映し出されるものに身を委ねるだけで、どこまでも続くかのような長い船旅に出ることになる。アジア最長の大河を、海に注ぐ河口から山奥の水源まで、小さな船で遡っていく。その旅は、長大な距離を移動する旅であると同時に、壮大な歴史を遡る時間の旅にもなっている。船が途中で停泊するたびに、そこにはまるで異なる世界がある。主人公は土地ごとに同じ顔をした女性に出会うが、彼女は同じではない。そのうえ、メタファーは単純ではない。主人公には迷いがあること、彼が旅をしながら亡父の書いた詩集「長江図」を読むこと、この船旅にはある事情があること、それらが層をなして重なり、物語が大河の波のように交錯していく。
この短評にはネタバレを含んでいます