教誨師(きょうかいし) (2018):映画短評
教誨師(きょうかいし) (2018)ライター2人の平均評価: 5
最後の主演作に、これほどふさわしい役はないだろう
相手にするのは6人の死刑囚。本心が見えてこない彼らに、それぞれ的確な対応を試みて、心を開かせようとする。おそらく大杉漣さんが、役者人生で魑魅魍魎な相手との共演によって鍛えてきたアプローチが、この教誨師役の演技にそのまま引用されているのでは? そう考えながら観ると、おのずと目頭が熱くなる。
死刑囚たちの個性も映画を盛り上げるうえで効果的で、漣さんと光石研のやりとりは親しさゆえの空気感にほっこりするし、烏丸せつこは、かつてドラマで演じた尼崎連続殺人の角田美代子を彷彿させる狂気的名演。
そしてラストカットは、死刑の是非を深層心理に訴えかける。その意味で、大杉漣主演作を超えて珠玉の一本。
魂の共振する小さな部屋がマグマのように熱くなる
ほとんどギリシャ哲学的な対話劇。死刑制度という人間存在の根源と社会システムを複合的に問う難しい主題に、監督の佐向大は『休暇』(脚本)の成果を踏まえて執念で喰らいつく。スタンダードサイズの限定空間で放たれる言葉の精度と密度。シンプルな前半から映像的に豊かな後半へ。『絞死刑』を連想する向きは多いだろうが、もっと愚直かつ熱誠なアプローチで考察を深めていく。全編静かだがものすごくエモい。
大杉漣最後の主演作だが、ホスト役=受ける側として皆の話を傾聴する役回りなのに泣けた。百戦錬磨のプロと新星・素人を混ぜ込んだ配役は価格帯ミックスによる最強コーデ的な効果を生み、とりわけ烏丸せつこの「本物」感は圧巻!